詩
❁⃘ 101 ✩*̩̩̩̥✿*⁎ 音楽だけで語りあえたらどれほど優しさで満ちるだろうきっとどんないさかいも怒りも憎しみも嫉妬さえ和音のなかに溶けあっていくあなたの胸に耳をあてると思わず涙ぐんでしまうほど強くたしかな音楽が聞こえる ❁⃘ 102 ✩*̩̩̩̥✿*⁎ これまでた…
❁⃘ 91 ✩*̩̩̩̥✿*⁎ 聴かせてよもう一度いつかあなたがくちずさんでいた歌を潮の満ち干のようにいくたびも寄せては返す果てないメロディひょっとして胸の鼓動だったかしらそれともあなたと私とが引き合うさみしさの音階かしら ❁⃘ 92 ✩*̩̩̩̥✿*⁎ 放りあげた小石が…
❁⃘ 61 ✩*̩̩̩̥✿*⁎ ときどきだれかの記憶がまぎれて自分のことがわからないそう思いこんでいるだけでほんとうは私かもしれない私は私なのかそれともだれかなのかすこしばかり自信がないいま呼ばれた気がするおそらく私の名を ❁⃘ 62 ✩*̩̩̩̥✿*⁎ 石段に腰かけてず…
❁⃘ 31 ✩*̩̩̩̥✿*⁎ まぶしい夏の光はどこへ行ってしまっただろうあんなにも激しく愛しあいあんなにも固く結びあっていたはずなのに降りつづいた雨の果てにはだれもいないいまはたったひとつテニスボールだけが置き去られていて ❁⃘ 32 ✩*̩̩̩̥✿*⁎ いつかきっとそ…
❁⃘ 01 ✩*̩̩̩̥✿*⁎ 引き潮が置き去りにした泡が弾けるたび遠浅の夢が少しずつ覚めていく黙ったまま降りしきる白い雨の朝遥か遠い銀河からやって来たような気がしてあなたの名前をこっそり呼んでみるくりかえしくりかえし呼んでみる ❁⃘ 02 ✩*̩̩̩̥✿*⁎ 飲み残した…
fragments1 穏やかに目を覚ましおはようと言いたいだけなのに優しい朝のひかりのなか食卓を囲んでおいしさを分かちあいたいだけなのにふと耳にした歌にこころを奪われたいだけなのにこんなに美しい空のもと戦争が始まる ¸.•.¸¸୨˚̣̣̣͙୧¨*✼*¨୨˚̣̣̣͙୧¸¸.•.¸ fr…
穏やかに目を覚ましおはようと言いたいだけなのに優しい朝のひかりのなか食卓を囲んでおいしさを分かちあいたいだけなのにふと耳にした歌にこころを奪われたいだけなのに たとえば風が吹いて樹のざわめきにまぎれながらあなたの声がよみがえるときできればや…
「第18回東御市短詩型文学祭」の「現代詩の部」において、「特選」をいただきました。 審査にあたられた先生方はじめ、企画・運営に御尽力された皆様方に、衷心より御礼申し上げます。 残念ながら、表彰式は、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、中止と…
このたび、「第32回野田宇太郎生誕祭献詩」で一席をいただきました。審査にあたられた先生方はじめ、企画・運営に御尽力された皆様方に、衷心より御礼申し上げます。 「野田宇太郎文学資料館」のホームページに、一席受賞者コメントと作品が掲載されています…
第36回国民文化祭紀の国わかやま文化祭2021いわで「現代詩の祭典」において、「文部科学大臣賞」をいただきました。 審査にあたられた先生方はじめ、企画・運営に御尽力された皆様方に、衷心より御礼申し上げます。 #詩 #現代詩 #自由詩 #詩人 #詩集 #文芸 #…
あの東の空の果てそこにある星からのはじめての光はまだここにはとどかないだからそこに生まれた新しい世界そのことについて誰も知らない けれどもたしかに息衝いてちいさないのちの粒々たちがはじけてもえあつくながれて 地球というなまえさえなかった頃そ…
ほらそんなふうにあのひとも歩いていったあなたもまた私がすてたきのうの空へ死んだはずのあの私を見つけるのだといって歩いていったきっとどこかで生きているときらりと鋭い風を左の肩の傷に感じながらかならず見つけてくるからときっとつれて帰るからと待…
ちいさな肩のうえにあなたの胸があつい溶けてゆく柔らかなひろがりそして すこうし汗 決してたどりつけないだから遠さにあこがれてしまうそれならば見えてはいないのだろうかこんなにもあなたの胸があつくふるえそのなかにこんなにも確かにあなたの鼓動を感…
たしか腕から肩へそんな記憶があるいまではもう背中いっぱいにどこまでも繁りつづける数えきれない葉たち爪はうすみどりに染まり眼のなかのふくらんだ空に葉脈がひろがりはじめましたねだからもう心配はいらないあなたはそう言ってほほえみ私の腕をさやとふ…
樹たちが騒がしい夜は熱帯モンスーンの海を夢みる雨季のどのあたりだろういまごろ この日本では梅雨明けについて気象台が語る私のなかの気候についてあなたは話せるだろうか 雨の降る日を憶えていて見失ったはずの傘あるいは新しいレインコートそんなものを…
それは吹きちぎられたものたちの影それは朝に投げだされた夢それはうつむいた祈りそれは消える風紋それは私けれども私はひとつの遠さである めざめると誰もいない悲しい不在に満ちている遠浅の私うすら陽のなかせつなくあわくどこまでもひろがり 樹々もなく…
行きましょうかそう言って立ちあがったあなたの耳のふくらみでゆれていた午後の陽がまだそのあたりで立ち去りあぐねているそんな気がしたことのあるその椅子にあなたが腰かけていたのはいつだったろうそれとも黙ったままあなたがその場所にいたということそ…
せめてきょうの行方くらいはと寄せてはうずくまる想い出の片隅でしぶきをあびながらしばらくは描かれてゆく波紋をみつめていたけれども 誰もそれをとめることができないままやがて旋律はフィナーレへと流れあなたはいま最後のフレーズを穏やかに胸にうけとめ…
昇ったばかりの下弦の月を盗んでスーツケースに閉じ込めたら砂浜につづく坂道を急いで降りる海へと渡る風にせきたてられながらひりりとするかすかな傷を額に刻みながら 潮の満ち干が月のかなしみのせいならば水底に深く沈めてやればいい光も音もいらなくなっ…
レコード 溝のなかであなたはまだ生きていてあの頃よく歌ってくれたジャズのナンバーをちょっとだけよそ行きに歌っている 黒く磨かれたピアノの天板にいつもあなたの横顔がゆれていてそうしているのが癖だった指先でくゆらせている煙草その銘柄もしっかり覚…
埠頭 風は渡っていったそれきり もうこれ以上ここで旋律になって歌いつづけられないから預けてあった靴と楽譜をかえしてくださいそういってあなたはでていった真夜中の扉をあけ匂い立つ朝霧の彼方へさよならそのとき叫んだあなたのみずいろがぼくのなかでひ…
未遂 その街角をまがってまっすぐに行けば青空につきあたるからその城壁に沿って歩いてゆけばかならず青空にゆきつくからそう教えてくれた朱鷺色の髪の少女もウェディング・ドレスの裾を気にしながらいつだったか飛行場から翔びたっていった なにをそんなふ…
薄明 からんと晴れたぼくの胸のひろがりにそびえるひとつの梢があるその先にはいつからかちいさくあおざめた矢印があって 風が きまって吹いているので方角はいつも行方知れずだどこかで翼のはばたく気配がしてふりむけば黒く装ったあなたが横顔をみせて歩い…
扉をあけてでてゆけば突然の真昼 とりあえず〈とりあえず〉と書いてみてそこからはじまる物語もあるにちがいないけれどもこうして待ちつづけてはいてもあいかわらず空はまぶしい青でそのうえ気温は三十度を越えようとしている夏のはじまりひろがりはひろがり…
虹 殺人現場の隣でバッハのパッサカリアを聞きながらそのひとと午後のお茶を飲んでいたとはじまるひとつの物語を燃やしてしまったのよ書きあげてからあなたのそんなおしゃべりを聞きながらこうして紅茶を飲んでいるいま流れているのは誰のソナタだろう暖炉に…
流れる 流れるものは水だろうか時間だろうかどこかから来てどこかへと向けて流れているものはいつもひとではなかったか 岸辺でいつまでも見ているので河は流れてゆくのだろう見つめられることに耐えきれずやがて去るひとをいつくしみながら 朝刊を積みあげて…
メロディー あなたのくちびるからいまメロディーがあふれはじめる童歌でも流行歌でもなくあなたがうたうのはまぶしいひとつのメロディー 私の心のなかにもなりつづけているメロディーがあるなにげなくくちずさんでみるとそれはとてもなつかしい たとえば花び…
連作「電話」https://m.youtube.com/channel/UC4WIuglkD0dvVaWQcUahAZg [ 電話a ]凍った空の低いあたり今夜もいくつものあつい声がひとりからひとりへと駆けるその綾のかげを ひっそりさよならのさけびがとどくあなたのすべてが声になってたったいま私の肩…
「電話(4-4 電話d)」 朝も午後もあなたは不在で私のみた夢について聞かせてあげることができない九千五百七十回めの呼出音がいまあなたの部屋にとどくそれともひょっとして九千七百五十回めだったかしら暮れなずむ海は受話器のなかに満ちてきてやがて私は…
電話(4-3 電話c) 〈もしもし〉が〈申します〉ではなく〈もしかしたら〉と聞こえる昼さがり盲いた受話器の瞼の奥にはとびちる紅が貼りついて〈もしもし〉電話は追憶をたどりはじめるいつまでもつづく呼出音はどこへむかっているのだろうそんなとき電話も夢…