果てしない青のために(Pour le bleu sans fin)

青山勇樹:詩人。名古屋市在住。大学の教員として教育や研究に励みながら、詩を書いています。もともとは、高等学校の国語科の教員でした。31年間の高校勤務のうち、後半の14年間は教頭として学校の管理にあたりました。現在、大学では、言語と表現、日本語表現、日本の文学などの講義を担当しています。あなたの心に、言の葉を揺らす優しい風が届けられますように。光と戯れる言葉のきらめきが、あなたの心にもあふれますように。仕事の依頼などはメールで ⇨ aoyamayuki1963-poetry@yahoo.co.jp

詩集『リエゾン LIAISON』より No.28「埠頭」

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埠頭

風は渡っていった
それきり

もうこれ以上ここで
旋律になって歌いつづけられないから
預けてあった靴と楽譜を
かえしてください
そういってあなたはでていった
真夜中の扉をあけ
匂い立つ朝霧の彼方へ
さよなら
そのとき叫んだあなたのみずいろが
ぼくのなかでひかる海になる

たったひとつのくちづけだけが
すべてをものがたることだってあるのだ
あなたのいなくなった窓辺のノートに
そう書いたいくつかの文字ですら
あなたのひろげていった海のなかでは
ひとむれのうたかたよりも
いまではもっとあわくて

こんなふうに見つめている
あの遠い朝焼けにしても
そこにたどりついたときにはもう
きっとどこかの夕陽にちがいない
それなのに
あなたはいってしまった
確かにそこに朝があるからと
そこにいって朝になるからと
そのあとに
こんなに眩しい
数えきれないさざ波をうち寄せて

確かなものなどどこにもない
そのことだけがあまりにも確かだ
ここにあるこのあふれる朝のほかに
いったいどこに朝があるというのだろう
そしてここにあるこの夜と
この愛といのちと歌とのほかに

けれどもいってしまった
立ちつくすぼくをかすめあっけなく鮮やかに
風は渡っていってしまった
それきり

 

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