果てしない青のために

あなたの心に、言の葉を揺らす優しい風が届きますように。

2021-01-01から1年間の記事一覧

🏆 第32回野田宇太郎生誕祭献詩 一席 受賞 🏆

このたび、「第32回野田宇太郎生誕祭献詩」で一席をいただきました。審査にあたられた先生方はじめ、企画・運営に御尽力された皆様方に、衷心より御礼申し上げます。 「野田宇太郎文学資料館」のホームページに、一席受賞者コメントと作品が掲載されています…

🏆 文部科学大臣賞 受賞 🏆

第36回国民文化祭紀の国わかやま文化祭2021いわで「現代詩の祭典」において、「文部科学大臣賞」をいただきました。 審査にあたられた先生方はじめ、企画・運営に御尽力された皆様方に、衷心より御礼申し上げます。 #詩 #現代詩 #自由詩 #詩人 #詩集 #文芸 #…

神話

あの東の空の果てそこにある星からのはじめての光はまだここにはとどかないだからそこに生まれた新しい世界そのことについて誰も知らない けれどもたしかに息衝いてちいさないのちの粒々たちがはじけてもえあつくながれて 地球というなまえさえなかった頃そ…

戦士の黄昏

ほらそんなふうにあのひとも歩いていったあなたもまた私がすてたきのうの空へ死んだはずのあの私を見つけるのだといって歩いていったきっとどこかで生きているときらりと鋭い風を左の肩の傷に感じながらかならず見つけてくるからときっとつれて帰るからと待…

後朝

ちいさな肩のうえにあなたの胸があつい溶けてゆく柔らかなひろがりそして すこうし汗 決してたどりつけないだから遠さにあこがれてしまうそれならば見えてはいないのだろうかこんなにもあなたの胸があつくふるえそのなかにこんなにも確かにあなたの鼓動を感…

棲息

たしか腕から肩へそんな記憶があるいまではもう背中いっぱいにどこまでも繁りつづける数えきれない葉たち爪はうすみどりに染まり眼のなかのふくらんだ空に葉脈がひろがりはじめましたねだからもう心配はいらないあなたはそう言ってほほえみ私の腕をさやとふ…

驟雨

樹たちが騒がしい夜は熱帯モンスーンの海を夢みる雨季のどのあたりだろういまごろ この日本では梅雨明けについて気象台が語る私のなかの気候についてあなたは話せるだろうか 雨の降る日を憶えていて見失ったはずの傘あるいは新しいレインコートそんなものを…

序章

それは吹きちぎられたものたちの影それは朝に投げだされた夢それはうつむいた祈りそれは消える風紋それは私けれども私はひとつの遠さである めざめると誰もいない悲しい不在に満ちている遠浅の私うすら陽のなかせつなくあわくどこまでもひろがり 樹々もなく…

椅子

行きましょうかそう言って立ちあがったあなたの耳のふくらみでゆれていた午後の陽がまだそのあたりで立ち去りあぐねているそんな気がしたことのあるその椅子にあなたが腰かけていたのはいつだったろうそれとも黙ったままあなたがその場所にいたということそ…

風の行方

せめてきょうの行方くらいはと寄せてはうずくまる想い出の片隅でしぶきをあびながらしばらくは描かれてゆく波紋をみつめていたけれども 誰もそれをとめることができないままやがて旋律はフィナーレへと流れあなたはいま最後のフレーズを穏やかに胸にうけとめ…

破鏡

昇ったばかりの下弦の月を盗んでスーツケースに閉じ込めたら砂浜につづく坂道を急いで降りる海へと渡る風にせきたてられながらひりりとするかすかな傷を額に刻みながら 潮の満ち干が月のかなしみのせいならば水底に深く沈めてやればいい光も音もいらなくなっ…