樹たちが騒がしい夜は
熱帯モンスーンの海を夢みる
雨季のどのあたりだろういまごろ
この日本では
梅雨明けについて気象台が語る
私のなかの気候について
あなたは話せるだろうか
雨の降る日を憶えていて
見失ったはずの傘
あるいは新しいレインコート
そんなものを用意してきてくれる
ことなんてあるだろうかあなた
雨季でなく
梅雨でもなく
しのびやかに歩きめぐる
ひとつがいの雨の脚がある
知らないからだの奥で
育ちつづけていた幾つもの粒々たち
気づくよりももっとまえから
私だけの暦を刻みながら
降りはじめた雨が
前髪を濡らしてゆく
あなたを乗せた快速
その遠ざかる気配を背中に
ふと駆けだしてしまう
帰途
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