果てしない青のために

あなたの心に、言の葉を揺らす優しい風が届きますように。

戦士の黄昏

f:id:aoyamayuki:20210821193419j:image

ほらそんなふうに
あのひとも歩いていった
あなたもまた
私がすてたきのうの空へ
死んだはずのあの私を
見つけるのだといって
歩いていったきっと
どこかで生きていると
きらりと鋭い風を
左の肩の傷に感じながら
かならず見つけてくるからと
きっとつれて帰るからと
待っていて
約束
この時間のこの場所で
いろをとめてひかりを
おとをそのままにして
きっときっと待っていてと
帰るからかならず
見つけてもどるから本当に
憶えているから
あの燃える朱鷺色の髪を
立ちつくした湖の碧を
遠ざかる雷鳴を
たったこのいまもこんなふうにありありと
あのとき私の瞳に
ながれていた虹の彩りを
こんなにも鮮やかに
こんなにもはっきりと
よみがえらせることができるから
そのまま
じっといろになって
ひかりになっておとに
なったままじっとそのままで
かならず待っていて帰ってくるから
もどるから本当に
かならず見つけてくるからと
それでもいまでは
忘れてしまって
なにを見つけだせばよかったのか
わからなくなったままただ
ひとつの大きな傷痕になって
私の内側を
どこまでも歩きつづけている
あなた

 

#詩 #現代詩 #自由詩 #詩人 #詩集 #文芸 #文学 #芸術 #言葉 #創作