ほらそんなふうに
あのひとも歩いていった
あなたもまた
私がすてたきのうの空へ
死んだはずのあの私を
見つけるのだといって
歩いていったきっと
どこかで生きていると
きらりと鋭い風を
左の肩の傷に感じながら
かならず見つけてくるからと
きっとつれて帰るからと
待っていて
約束
この時間のこの場所で
いろをとめてひかりを
おとをそのままにして
きっときっと待っていてと
帰るからかならず
見つけてもどるから本当に
憶えているから
あの燃える朱鷺色の髪を
立ちつくした湖の碧を
遠ざかる雷鳴を
たったこのいまもこんなふうにありありと
あのとき私の瞳に
ながれていた虹の彩りを
こんなにも鮮やかに
こんなにもはっきりと
よみがえらせることができるから
そのまま
じっといろになって
ひかりになっておとに
なったままじっとそのままで
かならず待っていて帰ってくるから
もどるから本当に
かならず見つけてくるからと
それでもいまでは
忘れてしまって
なにを見つけだせばよかったのか
わからなくなったままただ
ひとつの大きな傷痕になって
私の内側を
どこまでも歩きつづけている
あなた
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