果てしない青のために

あなたの心に、言の葉を揺らす優しい風が届きますように。

まなざしの構造 — パウル・クレーと谷川俊太郎

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 『詩と思想』10月号(Vol.3 №443、土曜美術社出版販売)に、谷川俊太郎詩集『クレーの絵本』(講談社、1995)についての小論を寄せています。

 機会がございましたら、お読みいただけると幸甚です。
 
“病魔と闘う日々にあって、迫りくる死へのまなざしは、儚いいのちに、美しさを見出そうとしていたのではないか。この世に住みながらも、その背後の世界にある語り得ない何か — おそらくは創造の真理 — を、クレーは見つめている。”
 
“クレーのまなざしの先に、谷川は魂の住処を見た。そこはまた、詩の生まれる場所でもある。”
 
“クレーの絵に触発された詩は、いずれも平易な語彙を用い、ひらがなばかりで書かれている。けれども、読み返すたび、いのちの根源を見つめる詩人の鋭いまなざしに驚かされる。かけがえないいのちの重さと、ゆえにこそ、いのちが宿命的に孕む玲瓏たるかなしみとが胸に迫る。”

 

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真夜中の観覧車
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 など 全27篇

 

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海へ伸ばした指先で何度も繰り返しながら
空に刻まれたあなたの名前をなぞってみる
待ちかねたように優しい光が幾つもこだまする
吹いてくる吹いてくるまた風が吹いてくる
吹いてくるあなたがくるまたあなたがきてくれる

せつなさがあふれてどうにも止められないときは
誘われるまま透きとおる青になって海をわたる
おそらくいのちはいくたびも姿を変えるだろう
いつかあなたとひとつになるからきっとなるから
大きな願いそのものに成り代わろうとするように

(「墓碑銘」より)

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青山勇樹
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📣 お知らせ① 📣

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新しい詩集の上梓に向け
ただいま 鋭意 準備中❗️

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校正も終了し
表紙カバー・見返し・扉なども
熟考を重ね
ようやく決定しました

年末には完成する予定です

次回は もう少し詳しく
お知らせします

⋆*❁*⋆ฺ。* ⋆*❁*⋆ฺ。*

 

愛の礫stillalive Jul. 2023

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❁⃘  101 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

音楽だけで語りあえたら
どれほど優しさで満ちるだろう
きっとどんないさかいも
怒りも憎しみも嫉妬さえ
和音のなかに溶けあっていく
あなたの胸に耳をあてると
思わず涙ぐんでしまうほど
強くたしかな音楽が聞こえる


❁⃘  102 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

これまでたくさんの線を引き
賢くなったつもりでいたけれど
こちらとあちらとを分けるとき
どんな嫉妬も侮蔑もないだろうか
縦にも横にもひとびとの間にも
引かれたおびただしい線から
いったいなにが生まれただろう


❁⃘  103 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

胸の鼓動も汗の匂いもくちづけも
シャツの色さえ憶えているのに
あなたの顔が思い出せない
あなたはほんとうは誰だったかしら
眼差しは私を見つめてくれるけれど
首も肩も腕も胸も
こんなにありありとよみがえるけれど


❁⃘  104 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

世界はどんなふうに
終わりを迎えるだろう
おやすみと言いながら
枕元の灯りを消すように
いつのまにか治っている
薬指の擦り傷のように
そっと息を吹きかけるように
世界は終わるだろう
あたりまえで気づかないうちに


❁⃘  105 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

どうしてもうまく言えないときは
句読点になってうずくまる
余白にひろがる水面に
さざなみが立つように
ときおりこっそり
口笛なんかを吹いたりする
どうかすこしだけ立ちどまって
耳をすましてくれますようにと


❁⃘  106 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

捨ててあったあなたの抜け殻を
セーターの代わりに着てみたら
思いのほか似合って
誰にも気づかれない
それどころか
声も仕草もそっくりになって
あなたの名前で呼ばれるので
今ではすっかり
あなたとして暮らしている


❁⃘  107 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

手のひらのなかで
小さなためいきが揺れやまない夕暮れ
彼方から雨の匂いがするような
大切な約束を忘れているような
そんな気がして
こころせくのはなぜかしら
ほんとうはひとりきり
ただ窓から眺めているだけなのに


❁⃘  108 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

からだのどこかに
置き去られた傷痕があって
いつまでも治らない
澄んだ海が
ときおり
涙となってあふれてくる
かなしくはないはずなのに
あなたと音楽を
聴いているだけなのに
穏やかな風に
吹かれているだけなのに


❁⃘  109 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

公園のベンチでうたた寝をしていると
ふいに
あなたがやって来たような気がする
あわてて目を覚ましてみると
猫が背中を丸めている
あなたの声も聞こえたはずなのに
空の青がまぶしすぎて
どうしても涙がとめられない


❁⃘  110 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

人知れず
ゆっくりと迷子になりたいのに
一日の終わりが
あまりにも華やかすぎて
じょうずに隠れることができない
たくさんの音楽やおしゃべりで
飾りたててさえいれば
にぎやかな明日が
やってくるとでもいうように


#詩 #愛の礫 #あいち2022 #礫 #礫の楽音

愛の礫stillalive

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❁⃘ 91 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

聴かせてよ
もう一度
いつか
あなたがくちずさんでいた歌を
潮の満ち干のように
いくたびも寄せては返す
果てないメロディ
ひょっとして
胸の鼓動だったかしら
それとも
あなたと私とが引き合う
さみしさの音階かしら


❁⃘ 92 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

放りあげた小石が
空の青に跳ねかえって
澄んだ音で鳴る
聞こえたら
大きく手をふってくれないか
そうしたら
手をつないで
きょうの行方を探しにいこう
星たちが生まれる場所へ
空にひろがる波紋が
消えてしまうまえに


❁⃘ 93 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

夕暮れの花いちもんめ
影ばかり長くなるのが怖くて
おもわず手を離してしまったけれど
呼ばれたあの子は
それからどこへ行っただろう
すっかりなまえも忘れてしまったのに
雪が降るたび
つないだぬくもりがよみがえる


❁⃘ 94 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

予報では
ずっと晴れわたるはずだったのに
いつしか
音もなく降りしきり
やがて世界を覆いつくすかしら
どうかあなたが
そんな悲劇の
ひとつになってしまいませんように
おびただしい祈りが
雪のなかを縫いすすむ
聖夜


❁⃘ 95 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

眠れない夜は
サバナの蝶を思う
空よりずっと青い翅で
地響きをたてるヌーの群れを見送り
樹にひそむヒョウの耳をかすめる
やがて熱く乾いた風になり
地球をやさしく包んで
遠い銀河の夢をみる
いつまでも眠れない夜は


❁⃘ 96 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

星はあまりに遠いので
夜空には過去ばかり並ぶ
あの星座は
だれの思い出かしら
こんなに懐かしいのは
いのちが
銀河をわたって来たからにちがいない
星が消えれば
あしたがやってくる
いのちの未来は
だれも知らない


❁⃘ 97 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

おやすみを交わしたひとに
おはようを言える朝
眠そうなあなたに
きのう見た夢を
早く聞かせてあげたい
そうしなければ
またすぐに
焼きあがったばかりのバタールと
香ばしいコーヒーとともに
新しい物語がはじまる


❁⃘ 98 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

ひとつくらい盗んでも
気づかれることはないからと
指をのばして星をつまみ
ポケットに入れてくれた
あのときのぬくもりが
いまも燃え残っていて
ひとりきりの夜
そっと取りだし
こっそり
ちいさな声で
話しかけてみる


❁⃘ 99 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

かくれんぼで
あんまり上手に隠れたら
だれにも見つけてもらえない
そんなときは
しかたがないので
鬼になってみるしかない
あのときから
ずっと鬼になって
さがしまわっているけれど
いつまでたっても
見つけられない


❁⃘ 100 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

気がついたら
のっぺらぼうだったので
だれか代わりに泣いておくれ
涙をこぼし
声をあげ
どうか泣いてくれないか
笑うことや怒ること
キスすることもかなわない
これではあまりに悲しいのに
泣くこともできないなんて

 

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#詩 #愛の礫 #あいち2022 #礫

 

愛の礫ALIVE3

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❁⃘ 61 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

ときどき
だれかの記憶がまぎれて
自分のことがわからない
そう
思いこんでいるだけで
ほんとうは私かもしれない
私は私なのか
それともだれかなのか
すこしばかり自信がない
いま
呼ばれた気がする
おそらく私の名を


❁⃘ 62 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

石段に腰かけて
ずっとあなたを待っていたら
濃い影になってしまって
貼りついたまま
動くことができない
それでも
ときどき黒猫が来て
ひなたぼっこをしていくけれど
どのくらい待ちましょう
たとえば
あともう二千年


❁⃘ 63 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

手のひらのなかで
ちいさなためいきが揺れやまない夕暮れ
ずっと彼方から
雨の匂いがする
こんな日は
遠ざかるレインコートを思いだす
いつまでも果たされない約束のように
憎しみもまた
激しい愛のかたちかもしれない


❁⃘ 64 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

自らを燃やすことでしか
ぬくもりを伝えられない
真夜中
ろうそくの炎を見つめていると
私のほうが揺れているように思える
ひとりきりのつもりでいたけれど
ふり仰げば
ひとつくらい盗んでも
気づかれないような星空


❁⃘ 65 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

それから
と投げだされたまま閉じる物語みたいに
穏やかな光に貫かれ
終わりを迎えられたらいいのに
花なのか恋なのか
それとも
いのちそのものの終わりなのか
それから

きっと
誰かがみている夢のつづきだ


❁⃘ 66 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

今日のことばは
今日のうちに
いつのまにか
風に吹かれていくはずなのに
行き先のないいくつかが
手のひらのなかでうずくまる
火をつけてみても
燃えのこってしまうので
あとはただ
ぎゅっと
握りしめてみるしかない


❁⃘ 67 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

見つめあうまなざしは
こんなに近いのに
あなたの瞳の奥には
そこしれない海がひろがっていて
きっと岸にはたどり着けない
つないだ手のぬくもりが
ふっと消えそうな夕暮れ
たしかめるように
あなたの名を呼びたくなる


❁⃘ 68 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

もうすぐ世界が終わるので
美しい音楽が聞きたい
それはあなたがくちずさむ
遠い昔に覚えた愛の歌
やさしいひかりに包まれて
あなたの愛がこだまする
もっと美しい音楽を聞いていたい
もうすぐ
最後の夕陽が落ちるので


❁⃘ 69 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

あまりにも急いで
陽が沈んでしまうと
影たちも迷子になって
あわてて誰かの足もとに飛びつく
私もいつだったか
知らない影を連れ帰リ
靴を脱ごうとして
驚いたことがある
だから
それからは少しだけ
玄関は開けてある


❁⃘ 70 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

サラダに添えられた
ミニトマトの赤が
鮮やかすぎて目を奪われたあと
コーヒーのおかわりを
もう一口だけ飲んでみる
幸福な食卓にはいつも
食べきれないほどいのちが並ぶ
私もいつの日か
どこかに並ぶのかもしれない


❁⃘ 71 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

誰もいなくなった
真夜中の遊園地で
観覧車が回っていることがある
きょう乗せた人たちのことを
思い浮かべ
月の光がまぶしく散る
黒い海を見つめながら
行ったことのない
遠い南の島のことを
こっそりと夢にみている


❁⃘ 72 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

見あげた樹から
思いがけず枯れ葉が舞って
左の手に落ちてきた
一枚のいのちの終わりに
ただ通りすぎるだけの
私が選ばれたのは
ほんの偶然だったろう
乾いた軽さに触れた薬指の爪に
夕陽の赤が
ひっそり灯っている


❁⃘ 73 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

立ちつくす真冬の桜のしたで
うずくまって幹を抱きしめると
あなたの匂いがよみがえる
耳をあてれば
梢をわたる風が聞こえる
とぎれない乾いた旋律をみちづれに
まぶしい青にあこがれながら
あなたの夢が縫いすすむ


❁⃘ 74 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

書き終えたページの裏側には
真新しい余白がひろがっていて
あしたのにおいが
ほんの少しこぼれてくる
私の名前で綴じられたノートは
一度きりしか書けはしないが
あしたを埋めるインクが
美しい色でありますように


❁⃘ 75 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

おやすみなさいを言ったひとに
おはようを告げられる朝
まぶしすぎるほどの光と
パンとミルクと
柔らかなほほえみさえあれば
よろこびを感じられる
重ねた指先をつたう
あなたのぬくもり
たしかな今を刻むいのちがある


❁⃘ 76 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

黙ったままでいると
私のなかに
いくつもことばが降り積もる
一日の終わり
ひとつひとつ
たしかめるように
暮れていく空に放ると
ちいさく燃えながら散って
見あげれば
ひそかな願いみたいに
新しい星座が並びはじめる


❁⃘ 77 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

私のなかにひろがる
ひとつの遠さに
あなたが手のひらを差し入れる
柔らかなぬくもりは
どこか懐かしい
手を重ねてみると
あなたのほうがもっと果てしない
交わるふたつの遠さは
静かに溶けあい
やがて光る永遠になる


❁⃘ 78 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

空にひろげた果てしない五線譜に
あなたの投げた音符が散って
新しい季節がはじまる
降りそそぐメロディと
握りしめたひとつぶのかなしみ
たったそれだけで
きっとどこまでも優しくなれる
ほら
また風がたつ気配がする


❁⃘ 79 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

このままもう少し
抱きしめていられたら
ぬくもりの意味について
語ってあげられるかもしれない
それよりも黙ったまま
じっとしていればいいかしら
海鳴りの聞こえる午後
漆黒の闇のなかで光る
青い地球を思い浮かべる


❁⃘ 80 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

からだのずっと奥に
降りやまない雨があって
ずぶ濡れになってみたい
そう思うことがある
なにも見えない激しい音のなかを
ひたすら歩きたい
それでも今は
背中を丸め
傘を握りしめたまま
通りすぎることしかできない


❁⃘ 81 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

指が
かたちを憶えていて
あふれる陽ざしのなか
あなたをたどりはじめる
ときめきもよろこびも
すべて忘れはしないけれど
記憶はいつも透き通っていて
空の青ばかりまぶしい
やさしさとかなしさは
なぜか少し似ている


❁⃘ 82 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

あなたとの関数は
いつも双曲線になって
どうしてもグラフが描けない
わざと間違えて
答え合わせで困っていると
あなたが正しく描いてはくれるけれど
空の青に消える飛行機雲のように
せめて
あなたに届く放物線なら


❁⃘ 83 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

降りしきる雪を
救急車のサイレンが切り裂く
クリスマスキャロルが
家路への足を急がせる
エナメルのコートが
肩をぶつけて行き過ぎる
切ないめまいのなか
遠くで誰かが叫んでいる
助けてほしいと
きれぎれの声が呼ぶ


❁⃘ 84 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

あなたの胸に耳をあてると
遠い海鳴りが聞こえる
ずっと昔
すべてのいのちがまだ
潮の満ち引に揺れていたころの
記憶かもしれない
できるなら
このまま手足を丸め
ほんの少し猫背になって
ぬくもりのなかで眠りたい


❁⃘ 85 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

あちこちで扉の閉まる音がする
すっかり日も暮れてしまったのに
どこに帰ればいいのだろう
鳥たちがいっせいに
はばたきを止めるように
音をたてて扉が閉まる
しかたがないから
大きなはさみで
夜空を切り抜くしかない


❁⃘ 86 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

光になれたら
だれより早く
あなたのもとへ行けるのに
なにより強く
輝かせてあげられるのに
まっすぐ迷いなく
どんな暗闇のなかでも
恐れることはないけれど
あまりにもまぶしくて
きっと
あなたは私を見つけられない


❁⃘ 87 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

公園の隅に
ちいさな椅子が置き去られている
古くなってぼんやりはしても
腰かけたひとたちの
ぬくもりは忘れられない
今夜も
冷たい月の光にぬれ
名前も顔も知らないけれど
通り過ぎたたくさんの
背中の夢をみている


❁⃘ 88 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

背中を覆っていたつぼみが
今朝いっせいに開いたので
服が着られない
指からも
するする蔓が伸び
手も洗えない
しかたないので
まぶしい陽を浴び
ゆっくり光合成をしながら
あなたとの約束に遅れる言い訳を
考えてみる


❁⃘ 89 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

産んだばかりの卵から
もう海がかえって
潮の香りをさせている
まぶしい陽を浴びて
やがて
ちいさな細胞が
ゆらゆら漂いはじめるにちがいない
そのあとはしばらく
待たなければならないので
新しい星座でも
考えてみる


❁⃘ 90 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

ことばも
枯れ葉のように散るなら
美しい炎で燃やしてやりたい
風の歌を聴きながら
あざやかな光を放ち
空の高みへと舞う
燃えつきたあとは
送り火が行方を照らすから
迷わず
遠い夜空に還って
きっと消えない星になる

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#詩 #ことば #愛の礫 #あいち2022 #礫

 

 

愛の礫ALIVE2

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❁⃘ 31 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

まぶしい夏の光は
どこへ行ってしまっただろう
あんなにも激しく愛しあい
あんなにも固く
結びあっていたはずなのに
降りつづいた雨の果てには
だれもいない
いまは
たったひとつ
テニスボールだけが置き去られていて

 

❁⃘ 32 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

いつかきっと
そんな言葉が
口をつくけれど
それがいつのことなのか
約束できるわけなどなく
ただ
たしかなことは
遠ざかる背中が
まぶしくてしかたないこと
こんなにも痛いのは
握りしめた手のひらだろうか
それとも

 

❁⃘ 33 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

陽ざかりの坂道を
ひとり降りていく背中に
思い出たちが降りしきる
遠ざかる時間を
埋めつくそうとでもいうように
たえまなく
あとからあとから降りしきる
言いよどんださようならなど
かき消されてしまうほどに

 

❁⃘ 34 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

曇ったガラスに
指はサヨナラを書いているのに
唇が
ごめんなさい
のかたちをしている
午前零時のプラットホーム
快速が置き去った夜に
すべてが溶けて
なにも見えない
終わりを告げるように
遠く
踏切の鐘が聞こえる

 

❁⃘ 35 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

あなたのくれた致死量の愛を
ひと息に飲みほして
あとは静かに目をつむる
あてどない潮の満ち干と
高鳴る鼓動が重なったら
きっとあなたとひとつになれる
ひかりもおともすべてが消えて
なにかはじける予感がする

 

❁⃘ 36 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

まぶしい陽のなかで
すべてに影があるように
どんなよろこびにも
一粒の涙がとけている
いのちがいのちを養いとして
はじめて輝けるのならば
ぬくもりを抱きしめながら
私も誰かの光のための
ちいさなかなしみになりたい

 

❁⃘ 37 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

ちいさな陽だまりをひとつ盗んで
あなたのポケットに忍ばせておくから
そっと取りだしてみるといい
ふいにたちすくみ
わけもなく涙があふれでるときに
だれにおやすみを言うこともなく
ひとりきりで眠りにつくときに

 

❁⃘ 38 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

なぜ
と問いかけても
誰も答えてくれないなら
私自身が問いになるほかない
よろこびもくるしみも
せつなさもときめきも
すべてを受けとめ
すべてのなぜに向きあうとき
涙の奥に光る美しさを
見つけられるかもしれない

 

❁⃘ 39 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

生まれてきたことだけで
かけがえのない奇蹟なら
出会えたことは
たとえようもなくまぶしい
祈ることしかできないけれど
あなたのまっすぐなまなざしが
世界を覆うたくさんの悲劇の
ひとつになってしまいませんように

 

❁⃘ 40 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

忘れものをしたはずなのに
何だったのか思いだせない
そんなせつない夏休みの記憶が
ふいによみがえることがある
大切なものから先に
捨てられてしまっても
ただ見送ることしかできない
あまりにも美しい夕暮れに

 

❁⃘ 41 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

夕暮れのあとの白い月は
さようならの結晶でできている
だからあんなにも綺麗に
あんなにも冷たく輝くのだろう
恋人に
あこがれに
絶望にさようなら
そう告げることで初めて
安らかな眠りにつけるのかもしれない

 

❁⃘ 42 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

ひとはひとつの遠さではないか
激しい夕暮れ
取り返しのつかないことを
したかのように消えていく青が
空の高みにちいさな風を置き去りにする
そんなときは祈るように
手のひらを胸に置き
あなたのことを思い浮かべる

 

❁⃘ 43 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

泣きながら帰ったあの日
むせるほどのキンモクセイ
はっきりと覚えている
なにがあったのか
なぜなのか
涙のわけはとうに忘れた
けれど
痛いほど打ちつけた
あつい鼓動だけは
いまも
たしかに
胸の奥に刻まれている

 

❁⃘ 44 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

遠いあやまちを
だれも罰してくれないので
手首の傷といっしょに
ちいさな硝子瓶につめて
長い坂の果てにある海へ
思いきりほうり投げる
水平線の真上で
光って消えたけれど
今夜の一番星はきっと
私の罪にちがいない

 

❁⃘ 45 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

朝がこれほど光に満ちていたのを
忘れていたわけではないけれど
時刻表や新聞のせいにして
見えないふりをしていたかもしれない
指をひろげて腕をかかげ
木洩れ陽をつかもうとするとき
あたたかなほほえみがよみがえる

 

❁⃘ 46 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

どこかにいつも朝があるように
どこかにいつも夜がある
愛も憎しみも生も死も
ほんとうは
ひとつの姿なのかもしれない
あなたの微笑みに隠された
ちいさなひとつぶの涙について
それでも私は
うまく語ることができない

 

❁⃘ 47 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

おびただしい金の十字架を
人知れず高くかかげ
ちいさな祈りを捧げている
金木犀の華やかな香りが
降りしきる夕暮れ
手のひらを見つめてみる
生まれてきたとき
握りしめていた約束を
果たすことができただろうかと

 

❁⃘ 48 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

ふとしたはずみで
途中下車することがあるように
降りるはずの駅なのに
乗り過ごしたくなることもある
たとえどれほど道から外れても
いつでもそこはどこかの途中で
眼を閉じて耳をすませば
きっと優しい歌が聞こえる

 

❁⃘ 49 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

月のしずくを盗んで帰って
ふっと一息ふきかける
みっつ数えるあいだに
炎を灯すことができたなら
ほんのつかのま
魂がよみがえるという
めざめると
暗闇のなかのちいさな光から
吐息のように
あなたの呼ぶ声がする

 

❁⃘ 50 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

まばたきをしている間に
世界が終わってしまう気がして
眼を閉じることができない
抱きしめているのに
あなたが溶けてしまうようで
胸の鼓動が止まらない
明るい秋の陽ざしを浴びて
いま
あなたのまなざしが揺れている

 

❁⃘ 51 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

指を伸ばした先に触れるものが
朝の光だけだったとしても
そこに生まれたちいさなぬくもりを
いとおしいと抱きしめたい
なにげない仕草に
しあわせがひそむように
優しいおはようを
目覚めたばかりのあなたに告げたい

 

❁⃘ 52 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

記憶が打ち寄せる浜辺で
あなたのかけらを拾う
虹色に光る貝殻を
耳にあてると聞こえるのは
あなたの歌声
こんなに懐かしいのに
なんの歌か思いだせない
握りしめた掌のなかで
メロディだけが
いつまでも繰り返される

 

❁⃘ 53 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

夢から覚める夢をみた朝は
遠くにきまって海鳴りが聞こえる
午後には嵐になるだろう
もしも許されるのなら
空から星をひとつ盗んできて
瞳の奥に沈めておきたい
どんな闇におそわれても
光を見失わなくてすむように

 

❁⃘ 54 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

今日の答えが
風に吹かれながら
謎のかたちのまま
立ち去りあぐねている
夕暮れ
左手に残った
あなたのぬくもりが
ゆっくり消えていく
蝉は
とうに死んでしまったのに
脱ぎ捨てられた
抜け殻だけが
いつまでもかなしい

 

❁⃘ 55 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

いろやかたちやおとやにおいに
あなたのすべてを還元し
私の細胞のひとつひとつが
あざやかに記憶している
からだのなかを
あなたの気配が駆けめぐり
いつもまなざしを感じられる
そうしてきっと
いつかひとつになれる

 

❁⃘ 56 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

知らないあいだに
影を盗まれてしまったので
あかるい陽のなかを
歩くことができない
夜になれば
闇ばかり選んで
こっそり出かけられる
それよりも
いっそ影になってしまえば
つめたい月の光を
浴びることもできるのに

 

❁⃘ 57 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

陽だまりをぎゅっとしぼって
手のひらに落ちた蜜柑色のしずくを
ひといきに飲みほしたら
やさしい香りを放つ
あかるい粒々に
なれる気がする
見あげると
あまりにも空がまぶしいから
ぎゅっと
もっとぎゅっとしぼって

 

❁⃘ 58 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

ちいさな嘘をついたら
あなたがかなしい顔をした
おおきな嘘に
みんながそうだとうなずく
嘘に嘘をかさねたら
自分がだれなのかわからない
嘘つきにはなりたくないけれど
きっといつも
嘘が悪いばかりではないけれど

 

❁⃘ 59 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

目をこらさなければ
見えないものもあるように
まぶたを閉じることで
はじめて気づけるものがある
見えているつもりで
ほんとうはなにも見ていなかったと
ひとり立ちどまり
頬にあたる風のあざやかさに
驚いている午後

 

❁⃘ 60 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

声にならないことばを
からだいっぱい詰めこんで
真夜中の底に横たわり
星々を繋いで
新しい星座を作った
あのときのあの場所へ
もういちど
取りに帰ろう
言えなかったことばを
忘れられないことばを
大声で叫ぶために

 

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#詩 #ことば #愛の礫 #あいち2022 #礫

愛の礫ALIVE1

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❁⃘ 01 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

引き潮が置き去りにした泡が弾けるたび
遠浅の夢が少しずつ覚めていく
黙ったまま降りしきる白い雨の朝
遥か遠い銀河からやって来たような気がして
あなたの名前をこっそり呼んでみる
くりかえしくりかえし呼んでみる


❁⃘ 02 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

飲み残したコーヒーのように
「それから」とつぶやいたまま
あなたは席を立とうとする
遠くで静かに海がひかる午後
あなたの指先ばかりを見つめている


❁⃘ 03✩*̩̩̩̥✿*⁎

麦藁帽子のへこみに置き去られているのは
背中に広がる潮の香りの日焼けの跡と
ラズベリーアイスクリームの夕焼け
それから帰り道で拾った貝殻の奥で
いつまでもこだまするさようならの声


❁⃘ 04 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

あなたのひろげた海の底で
うずくまる一粒の真珠になりたい
寄せては返す波の鼓動と
潮の香りを養いとして
透きとおるほどの青に染められ
いつまでも眠る真珠になりたい


❁⃘ 05 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

心のまんなかに土砂降りの今日があって
それなのにいつも傘が見あたらない
水しぶきを避けて雨やどりしながら
遠まわりをしているうちに迷子になる
湯気がたちのぼるほどずぶ濡れてみたい
ときに訳もなくそう思うこともあるが
すべての名を叫べる夜明けはまだ来ない


❁⃘ 06 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

どこかで
硝子の割れる音が聞こえた
私のあげた悲鳴だったかもしれない
指先に赤が膨れあがって
後から痛みが追いついてくる
どうにかして
傷つく前に
痛みを知る方法はないかしら
絆創膏にできた染みが
問いかけてくる


❁⃘ 07 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

あの日
校舎の隅に落ちていた陽だまりに
消えないで
と叫んだことは忘れてしまったのに
咲いていたタンポポの鮮やかな黄が
いきなりよみがえることがある
そのまぶしさの意味はわからないが
あのときの私は
いまもきっとそこにいる


❁⃘ 08 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

いまここにいる
そのことだけが
すべてだった子どもの頃のように
一日の終わり
暮れていく今日のせつなさに
声をあげて泣くことができたなら
どんなにいいだろう
美しい夕焼けが
涙に溶けて
きっと
ひかる永遠になる


❁⃘ 09 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

なにもかも否定したいのは
自分自身を
肯定したいからにほかならない
あらゆるものが美しく
みずみずしいいのちにあふれ
まぶしくて見つめられない
きらやかなすべてに嫉妬する
両腕をひろげ
こんなにも叫んでいるのに


❁⃘ 10 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

後ろ向きに座った電車のように
遠ざかる昨日は見えているのに
明日はいきなりやってくる
だから訳もなく
途中下車をして
止まった風景のなか
深呼吸したいこともある


❁⃘ 11 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

いつかみた夢のことを
聞かせてあげようとしたのに
いつのまにか夢のつづきをみている
それとも
話をする夢をみているのだろうか
夢の途中でふいに目覚めて
夢について話そうとして
どこにもあなたがいないと気がつく


❁⃘ 12 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

ヒエログリフのような
恋がしたいとあなたは言った
五千年ほど眠りつづけたら
ようやく誰かが読み解いてくれる
そんな恋がしたいと言った
夏の終わり
珈琲店の窓辺の席で
遠くに光る海を見つめながら


❁⃘ 13 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

あまりにもたくさんの人がいるので
ひとりになりたくてたまらない
そうは言っても
この星にひとり残されたなら
だれかに会いたくてたまらないだろう
おはよう
を交わす相手がいない朝
あなたの名前をつぶやいてみる


❁⃘ 14 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

欠けているところになりたいと
片目をつぶって腕を伸ばし
三日月をつま弾いていた左手の
綺麗な指先は覚えているけれど
それからあなたはどうしたっけ
帰り道
後ろからついてくるのは
ただまぶしすぎる満月


❁⃘ 15✩*̩̩̩̥✿*⁎

梅雨の晴れ間の飛行機雲に
何度もト音記号を描きながら
まぶしそうに鼻唄を歌っている
それなのに
どんな曲かは教えてくれない
こぼれるような笑顔で
バルコニーから身を乗り出し
青に染まろうとでもするように


❁⃘ 16 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

美しい朝がくるたび
だれかが待っている気がする
それなのに
顔も名前も思い出せない
たしかに待っているはずなのに
わからない
あふれるほどまぶしく
かぐわしい光を浴びながら
かなしい予感を
ただ抱きしめている


❁⃘ 17 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

影ひとつない昼さがり
黄色のパステルで
目も耳も塗りつぶされ
ひまわり畑で迷子になる
風も時間も止まったまま
きっとこうしてあともう千年
真夏の光に貫かれたら
あなたの愛に届くかしら


❁⃘ 18 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

なにも持たずに生まれてきたのに
大切なものが多すぎる
いっそすべてを捨て去ってみれば
むきだしになったいのちこそ
たったひとつのかけがえのないもの
いのちのかたちで生まれてきて
ただいのちとして終わりを迎える


❁⃘ 19 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

おやすみなさいのあと
目を閉じれば
ひとりきりだから
おはようからおやすみまでに
生まれた物語をできるだけ
たくさん抱えて眠りたい
おやすみなさいを言ったひとに
おはようを告げた朝
きのう見た夢を
話してあげたい


❁⃘ 20 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

いつかふたりで並んだまま
星座になることができたら
一晩中あなたといられる
夜空のなかで
いちばん小さな星座になって
ひっそりと光っていよう
それまでは
あなたが手を離しませんように
天の川で溺れませんように


❁⃘ 21 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

雨あがりの晴れた日
水たまりをのぞいてはいけない
深い青に吸い込まれ
戻ってこられなくなる
風もない昼さがり
澄んだ水たまりに
止まない波紋を見たことはないか
そこにいた誰かが
ふっといなくなってしまったあとで


❁⃘ 22 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

影踏みをしていると
だれのものでもない影を
踏んでしまうことがある
目隠しが外れた鬼のように
照れくさそうに
背中を丸めてうずくまり
足の裏をすり抜ける
草叢に消えるとき
さみしげに
ちらりとふりかえりながら


❁⃘ 23 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

あなたを抱きしめていると
なぜ生まれてきたのか
わかったような気がする
すべてのものは
とうに用意されていて
ひとつひとつはじめから
名づけていけばいいのだと
私が私であるために
私とあなたがここにいるために


❁⃘ 24 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

たくさんの樹のなかにいると
光合成ができるような気がする
指先まで伸ばして腕をかかげ
降りそそぐ木洩れ陽にふれる
光だけで生きられたら
どんなにいいだろう
静かに目を閉じたまま
ずっと風の歌を聴いていられる


❁⃘ 25 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

ありふれた一日のなかに
かけがえのない物語がある
たわいないおしゃべりや
ふとしたしぐさ
木洩れ陽のきらめき
吹きわたる風
なんでもないことが
これほどまでに愛おしい
ひとつぶの涙
それから
あなたの手のぬくもり


❁⃘ 26 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

教えてよ
どうかその歌を
あなたが口ずさむ
愛の歌
きっと
はるかな昔から
伝えられたメロディ
胸の鼓動とともに
ちいさくたしかに
いのちに刻まれ
時を越える
るるりららるる
星座を吹きぬけていく
風のような歌を


❁⃘ 27 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

訳もなく涙があふれるのは
すべてがあまりにも美しすぎて
どこにいればいいのか
わからないからかもしれない
たったひとつのいのちだけを
握りしめて生まれたように
もういちどひとりきり
激しい雨に打たれてみたい


❁⃘ 28 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

舞いあがった紙飛行機が
枝にかかったまま
おりからの雨に打たれている
飛ぶことも
降りることもかなわず
ぬれながら
黙ってうつむく
なにか言いかけた口のかたちで
息をひそめ
ただ
時が過ぎるのを待つみたいに


❁⃘ 29 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

おもいきり背伸びしたら
指先が青に染まった夏
はじけ散る光が
あまりにもまぶしくて
思わず眼を閉じたそのすきに
あなたが消えた
降りしきる蝉時雨と
熱い風のなかに
ほんのすこし汗ばんだ
あなたの匂いだけを残して


❁⃘ 30 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

そうだったと
気づいたときには
すべてが終わっていて
激しい風のなか
ひとり立ちつくす
だれもいない夕暮れ
燃えあがる空だけが
ひろがって
遠くに海鳴りが聞こえる
かなしみから生まれる
よろこびもあるかもしれない

 

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#詩 #ことば #愛の礫 #あいち2022 #礫

 

🏆 第18回東御市短詩型文学祭 特選 受賞 🏆

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「第18回東御市短詩型文学祭」
「現代詩の部」において、
「特選」をいただきました。

審査にあたられた先生方はじめ、企画・運営に御尽力された皆様方に、衷心より御礼申し上げます。

残念ながら、表彰式は、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、中止となってしまいました。

 


#詩 #現代詩 #自由詩 #詩人 #詩集 #文芸 #文学 #芸術 #言葉 #創作 #東御市

🏆 第32回野田宇太郎生誕祭献詩 一席 受賞 🏆

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このたび、「第32回野田宇太郎生誕祭献詩」で一席をいただきました。
審査にあたられた先生方はじめ、企画・運営に御尽力された皆様方に、衷心より御礼申し上げます。

野田宇太郎文学資料館」のホームページに、一席受賞者コメントと作品が掲載されています。
御一読いただけますと、幸甚です。

http://www.library-ogori.jp/noda/kenji/32/30-3.html

 

#詩 #現代詩 #自由詩 #詩人 #詩集 #文芸 #文学 #芸術 #言葉 #創作 #野田宇太郎生誕祭献詩

 

 

 

🏆 文部科学大臣賞 受賞 🏆

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第36回国民文化祭
紀の国わかやま文化祭2021
いわで「現代詩の祭典」

において、
文部科学大臣賞」をいただきました。

審査にあたられた先生方はじめ、企画・運営に御尽力された皆様方に、衷心より御礼申し上げます。

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#詩 #現代詩 #自由詩 #詩人 #詩集 #文芸 #文学 #芸術 #言葉 #創作

 

神話

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あの東の空の果て
そこにある星からのはじめての光は
まだここにはとどかない
だからそこに生まれた新しい世界
そのことについて誰も知らない

けれどもたしかに息衝いて
ちいさないのちの粒々たちが
はじけてもえあつくながれて

地球
というなまえさえなかった頃
そんなふうにうたった詩人が
遙かな西の空にいたかもしれない

夕日にむかって歩いてゆきながら
そう思うことはないか
けれどもまた星空はあらわれ
今夜あたりはもう
秋がしめやかにならびはじめる

 

#詩 #現代詩 #自由詩 #詩人 #詩集 #文芸 #文学 #芸術 #言葉 #創作