果てしない青のために

あなたの心に、言の葉を揺らす優しい風が届きますように。

愛の礫stillalive

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❁⃘ 91 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

聴かせてよ
もう一度
いつか
あなたがくちずさんでいた歌を
潮の満ち干のように
いくたびも寄せては返す
果てないメロディ
ひょっとして
胸の鼓動だったかしら
それとも
あなたと私とが引き合う
さみしさの音階かしら


❁⃘ 92 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

放りあげた小石が
空の青に跳ねかえって
澄んだ音で鳴る
聞こえたら
大きく手をふってくれないか
そうしたら
手をつないで
きょうの行方を探しにいこう
星たちが生まれる場所へ
空にひろがる波紋が
消えてしまうまえに


❁⃘ 93 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

夕暮れの花いちもんめ
影ばかり長くなるのが怖くて
おもわず手を離してしまったけれど
呼ばれたあの子は
それからどこへ行っただろう
すっかりなまえも忘れてしまったのに
雪が降るたび
つないだぬくもりがよみがえる


❁⃘ 94 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

予報では
ずっと晴れわたるはずだったのに
いつしか
音もなく降りしきり
やがて世界を覆いつくすかしら
どうかあなたが
そんな悲劇の
ひとつになってしまいませんように
おびただしい祈りが
雪のなかを縫いすすむ
聖夜


❁⃘ 95 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

眠れない夜は
サバナの蝶を思う
空よりずっと青い翅で
地響きをたてるヌーの群れを見送り
樹にひそむヒョウの耳をかすめる
やがて熱く乾いた風になり
地球をやさしく包んで
遠い銀河の夢をみる
いつまでも眠れない夜は


❁⃘ 96 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

星はあまりに遠いので
夜空には過去ばかり並ぶ
あの星座は
だれの思い出かしら
こんなに懐かしいのは
いのちが
銀河をわたって来たからにちがいない
星が消えれば
あしたがやってくる
いのちの未来は
だれも知らない


❁⃘ 97 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

おやすみを交わしたひとに
おはようを言える朝
眠そうなあなたに
きのう見た夢を
早く聞かせてあげたい
そうしなければ
またすぐに
焼きあがったばかりのバタールと
香ばしいコーヒーとともに
新しい物語がはじまる


❁⃘ 98 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

ひとつくらい盗んでも
気づかれることはないからと
指をのばして星をつまみ
ポケットに入れてくれた
あのときのぬくもりが
いまも燃え残っていて
ひとりきりの夜
そっと取りだし
こっそり
ちいさな声で
話しかけてみる


❁⃘ 99 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

かくれんぼで
あんまり上手に隠れたら
だれにも見つけてもらえない
そんなときは
しかたがないので
鬼になってみるしかない
あのときから
ずっと鬼になって
さがしまわっているけれど
いつまでたっても
見つけられない


❁⃘ 100 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

気がついたら
のっぺらぼうだったので
だれか代わりに泣いておくれ
涙をこぼし
声をあげ
どうか泣いてくれないか
笑うことや怒ること
キスすることもかなわない
これではあまりに悲しいのに
泣くこともできないなんて

 

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#詩 #愛の礫 #あいち2022 #礫

 

愛の礫ALIVE3

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❁⃘ 61 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

ときどき
だれかの記憶がまぎれて
自分のことがわからない
そう
思いこんでいるだけで
ほんとうは私かもしれない
私は私なのか
それともだれかなのか
すこしばかり自信がない
いま
呼ばれた気がする
おそらく私の名を


❁⃘ 62 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

石段に腰かけて
ずっとあなたを待っていたら
濃い影になってしまって
貼りついたまま
動くことができない
それでも
ときどき黒猫が来て
ひなたぼっこをしていくけれど
どのくらい待ちましょう
たとえば
あともう二千年


❁⃘ 63 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

手のひらのなかで
ちいさなためいきが揺れやまない夕暮れ
ずっと彼方から
雨の匂いがする
こんな日は
遠ざかるレインコートを思いだす
いつまでも果たされない約束のように
憎しみもまた
激しい愛のかたちかもしれない


❁⃘ 64 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

自らを燃やすことでしか
ぬくもりを伝えられない
真夜中
ろうそくの炎を見つめていると
私のほうが揺れているように思える
ひとりきりのつもりでいたけれど
ふり仰げば
ひとつくらい盗んでも
気づかれないような星空


❁⃘ 65 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

それから
と投げだされたまま閉じる物語みたいに
穏やかな光に貫かれ
終わりを迎えられたらいいのに
花なのか恋なのか
それとも
いのちそのものの終わりなのか
それから

きっと
誰かがみている夢のつづきだ


❁⃘ 66 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

今日のことばは
今日のうちに
いつのまにか
風に吹かれていくはずなのに
行き先のないいくつかが
手のひらのなかでうずくまる
火をつけてみても
燃えのこってしまうので
あとはただ
ぎゅっと
握りしめてみるしかない


❁⃘ 67 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

見つめあうまなざしは
こんなに近いのに
あなたの瞳の奥には
そこしれない海がひろがっていて
きっと岸にはたどり着けない
つないだ手のぬくもりが
ふっと消えそうな夕暮れ
たしかめるように
あなたの名を呼びたくなる


❁⃘ 68 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

もうすぐ世界が終わるので
美しい音楽が聞きたい
それはあなたがくちずさむ
遠い昔に覚えた愛の歌
やさしいひかりに包まれて
あなたの愛がこだまする
もっと美しい音楽を聞いていたい
もうすぐ
最後の夕陽が落ちるので


❁⃘ 69 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

あまりにも急いで
陽が沈んでしまうと
影たちも迷子になって
あわてて誰かの足もとに飛びつく
私もいつだったか
知らない影を連れ帰リ
靴を脱ごうとして
驚いたことがある
だから
それからは少しだけ
玄関は開けてある


❁⃘ 70 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

サラダに添えられた
ミニトマトの赤が
鮮やかすぎて目を奪われたあと
コーヒーのおかわりを
もう一口だけ飲んでみる
幸福な食卓にはいつも
食べきれないほどいのちが並ぶ
私もいつの日か
どこかに並ぶのかもしれない


❁⃘ 71 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

誰もいなくなった
真夜中の遊園地で
観覧車が回っていることがある
きょう乗せた人たちのことを
思い浮かべ
月の光がまぶしく散る
黒い海を見つめながら
行ったことのない
遠い南の島のことを
こっそりと夢にみている


❁⃘ 72 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

見あげた樹から
思いがけず枯れ葉が舞って
左の手に落ちてきた
一枚のいのちの終わりに
ただ通りすぎるだけの
私が選ばれたのは
ほんの偶然だったろう
乾いた軽さに触れた薬指の爪に
夕陽の赤が
ひっそり灯っている


❁⃘ 73 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

立ちつくす真冬の桜のしたで
うずくまって幹を抱きしめると
あなたの匂いがよみがえる
耳をあてれば
梢をわたる風が聞こえる
とぎれない乾いた旋律をみちづれに
まぶしい青にあこがれながら
あなたの夢が縫いすすむ


❁⃘ 74 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

書き終えたページの裏側には
真新しい余白がひろがっていて
あしたのにおいが
ほんの少しこぼれてくる
私の名前で綴じられたノートは
一度きりしか書けはしないが
あしたを埋めるインクが
美しい色でありますように


❁⃘ 75 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

おやすみなさいを言ったひとに
おはようを告げられる朝
まぶしすぎるほどの光と
パンとミルクと
柔らかなほほえみさえあれば
よろこびを感じられる
重ねた指先をつたう
あなたのぬくもり
たしかな今を刻むいのちがある


❁⃘ 76 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

黙ったままでいると
私のなかに
いくつもことばが降り積もる
一日の終わり
ひとつひとつ
たしかめるように
暮れていく空に放ると
ちいさく燃えながら散って
見あげれば
ひそかな願いみたいに
新しい星座が並びはじめる


❁⃘ 77 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

私のなかにひろがる
ひとつの遠さに
あなたが手のひらを差し入れる
柔らかなぬくもりは
どこか懐かしい
手を重ねてみると
あなたのほうがもっと果てしない
交わるふたつの遠さは
静かに溶けあい
やがて光る永遠になる


❁⃘ 78 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

空にひろげた果てしない五線譜に
あなたの投げた音符が散って
新しい季節がはじまる
降りそそぐメロディと
握りしめたひとつぶのかなしみ
たったそれだけで
きっとどこまでも優しくなれる
ほら
また風がたつ気配がする


❁⃘ 79 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

このままもう少し
抱きしめていられたら
ぬくもりの意味について
語ってあげられるかもしれない
それよりも黙ったまま
じっとしていればいいかしら
海鳴りの聞こえる午後
漆黒の闇のなかで光る
青い地球を思い浮かべる


❁⃘ 80 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

からだのずっと奥に
降りやまない雨があって
ずぶ濡れになってみたい
そう思うことがある
なにも見えない激しい音のなかを
ひたすら歩きたい
それでも今は
背中を丸め
傘を握りしめたまま
通りすぎることしかできない


❁⃘ 81 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

指が
かたちを憶えていて
あふれる陽ざしのなか
あなたをたどりはじめる
ときめきもよろこびも
すべて忘れはしないけれど
記憶はいつも透き通っていて
空の青ばかりまぶしい
やさしさとかなしさは
なぜか少し似ている


❁⃘ 82 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

あなたとの関数は
いつも双曲線になって
どうしてもグラフが描けない
わざと間違えて
答え合わせで困っていると
あなたが正しく描いてはくれるけれど
空の青に消える飛行機雲のように
せめて
あなたに届く放物線なら


❁⃘ 83 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

降りしきる雪を
救急車のサイレンが切り裂く
クリスマスキャロルが
家路への足を急がせる
エナメルのコートが
肩をぶつけて行き過ぎる
切ないめまいのなか
遠くで誰かが叫んでいる
助けてほしいと
きれぎれの声が呼ぶ


❁⃘ 84 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

あなたの胸に耳をあてると
遠い海鳴りが聞こえる
ずっと昔
すべてのいのちがまだ
潮の満ち引に揺れていたころの
記憶かもしれない
できるなら
このまま手足を丸め
ほんの少し猫背になって
ぬくもりのなかで眠りたい


❁⃘ 85 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

あちこちで扉の閉まる音がする
すっかり日も暮れてしまったのに
どこに帰ればいいのだろう
鳥たちがいっせいに
はばたきを止めるように
音をたてて扉が閉まる
しかたがないから
大きなはさみで
夜空を切り抜くしかない


❁⃘ 86 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

光になれたら
だれより早く
あなたのもとへ行けるのに
なにより強く
輝かせてあげられるのに
まっすぐ迷いなく
どんな暗闇のなかでも
恐れることはないけれど
あまりにもまぶしくて
きっと
あなたは私を見つけられない


❁⃘ 87 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

公園の隅に
ちいさな椅子が置き去られている
古くなってぼんやりはしても
腰かけたひとたちの
ぬくもりは忘れられない
今夜も
冷たい月の光にぬれ
名前も顔も知らないけれど
通り過ぎたたくさんの
背中の夢をみている


❁⃘ 88 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

背中を覆っていたつぼみが
今朝いっせいに開いたので
服が着られない
指からも
するする蔓が伸び
手も洗えない
しかたないので
まぶしい陽を浴び
ゆっくり光合成をしながら
あなたとの約束に遅れる言い訳を
考えてみる


❁⃘ 89 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

産んだばかりの卵から
もう海がかえって
潮の香りをさせている
まぶしい陽を浴びて
やがて
ちいさな細胞が
ゆらゆら漂いはじめるにちがいない
そのあとはしばらく
待たなければならないので
新しい星座でも
考えてみる


❁⃘ 90 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

ことばも
枯れ葉のように散るなら
美しい炎で燃やしてやりたい
風の歌を聴きながら
あざやかな光を放ち
空の高みへと舞う
燃えつきたあとは
送り火が行方を照らすから
迷わず
遠い夜空に還って
きっと消えない星になる

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#詩 #ことば #愛の礫 #あいち2022 #礫

 

 

愛の礫ALIVE2

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❁⃘ 31 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

まぶしい夏の光は
どこへ行ってしまっただろう
あんなにも激しく愛しあい
あんなにも固く
結びあっていたはずなのに
降りつづいた雨の果てには
だれもいない
いまは
たったひとつ
テニスボールだけが置き去られていて

 

❁⃘ 32 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

いつかきっと
そんな言葉が
口をつくけれど
それがいつのことなのか
約束できるわけなどなく
ただ
たしかなことは
遠ざかる背中が
まぶしくてしかたないこと
こんなにも痛いのは
握りしめた手のひらだろうか
それとも

 

❁⃘ 33 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

陽ざかりの坂道を
ひとり降りていく背中に
思い出たちが降りしきる
遠ざかる時間を
埋めつくそうとでもいうように
たえまなく
あとからあとから降りしきる
言いよどんださようならなど
かき消されてしまうほどに

 

❁⃘ 34 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

曇ったガラスに
指はサヨナラを書いているのに
唇が
ごめんなさい
のかたちをしている
午前零時のプラットホーム
快速が置き去った夜に
すべてが溶けて
なにも見えない
終わりを告げるように
遠く
踏切の鐘が聞こえる

 

❁⃘ 35 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

あなたのくれた致死量の愛を
ひと息に飲みほして
あとは静かに目をつむる
あてどない潮の満ち干と
高鳴る鼓動が重なったら
きっとあなたとひとつになれる
ひかりもおともすべてが消えて
なにかはじける予感がする

 

❁⃘ 36 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

まぶしい陽のなかで
すべてに影があるように
どんなよろこびにも
一粒の涙がとけている
いのちがいのちを養いとして
はじめて輝けるのならば
ぬくもりを抱きしめながら
私も誰かの光のための
ちいさなかなしみになりたい

 

❁⃘ 37 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

ちいさな陽だまりをひとつ盗んで
あなたのポケットに忍ばせておくから
そっと取りだしてみるといい
ふいにたちすくみ
わけもなく涙があふれでるときに
だれにおやすみを言うこともなく
ひとりきりで眠りにつくときに

 

❁⃘ 38 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

なぜ
と問いかけても
誰も答えてくれないなら
私自身が問いになるほかない
よろこびもくるしみも
せつなさもときめきも
すべてを受けとめ
すべてのなぜに向きあうとき
涙の奥に光る美しさを
見つけられるかもしれない

 

❁⃘ 39 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

生まれてきたことだけで
かけがえのない奇蹟なら
出会えたことは
たとえようもなくまぶしい
祈ることしかできないけれど
あなたのまっすぐなまなざしが
世界を覆うたくさんの悲劇の
ひとつになってしまいませんように

 

❁⃘ 40 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

忘れものをしたはずなのに
何だったのか思いだせない
そんなせつない夏休みの記憶が
ふいによみがえることがある
大切なものから先に
捨てられてしまっても
ただ見送ることしかできない
あまりにも美しい夕暮れに

 

❁⃘ 41 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

夕暮れのあとの白い月は
さようならの結晶でできている
だからあんなにも綺麗に
あんなにも冷たく輝くのだろう
恋人に
あこがれに
絶望にさようなら
そう告げることで初めて
安らかな眠りにつけるのかもしれない

 

❁⃘ 42 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

ひとはひとつの遠さではないか
激しい夕暮れ
取り返しのつかないことを
したかのように消えていく青が
空の高みにちいさな風を置き去りにする
そんなときは祈るように
手のひらを胸に置き
あなたのことを思い浮かべる

 

❁⃘ 43 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

泣きながら帰ったあの日
むせるほどのキンモクセイ
はっきりと覚えている
なにがあったのか
なぜなのか
涙のわけはとうに忘れた
けれど
痛いほど打ちつけた
あつい鼓動だけは
いまも
たしかに
胸の奥に刻まれている

 

❁⃘ 44 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

遠いあやまちを
だれも罰してくれないので
手首の傷といっしょに
ちいさな硝子瓶につめて
長い坂の果てにある海へ
思いきりほうり投げる
水平線の真上で
光って消えたけれど
今夜の一番星はきっと
私の罪にちがいない

 

❁⃘ 45 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

朝がこれほど光に満ちていたのを
忘れていたわけではないけれど
時刻表や新聞のせいにして
見えないふりをしていたかもしれない
指をひろげて腕をかかげ
木洩れ陽をつかもうとするとき
あたたかなほほえみがよみがえる

 

❁⃘ 46 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

どこかにいつも朝があるように
どこかにいつも夜がある
愛も憎しみも生も死も
ほんとうは
ひとつの姿なのかもしれない
あなたの微笑みに隠された
ちいさなひとつぶの涙について
それでも私は
うまく語ることができない

 

❁⃘ 47 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

おびただしい金の十字架を
人知れず高くかかげ
ちいさな祈りを捧げている
金木犀の華やかな香りが
降りしきる夕暮れ
手のひらを見つめてみる
生まれてきたとき
握りしめていた約束を
果たすことができただろうかと

 

❁⃘ 48 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

ふとしたはずみで
途中下車することがあるように
降りるはずの駅なのに
乗り過ごしたくなることもある
たとえどれほど道から外れても
いつでもそこはどこかの途中で
眼を閉じて耳をすませば
きっと優しい歌が聞こえる

 

❁⃘ 49 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

月のしずくを盗んで帰って
ふっと一息ふきかける
みっつ数えるあいだに
炎を灯すことができたなら
ほんのつかのま
魂がよみがえるという
めざめると
暗闇のなかのちいさな光から
吐息のように
あなたの呼ぶ声がする

 

❁⃘ 50 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

まばたきをしている間に
世界が終わってしまう気がして
眼を閉じることができない
抱きしめているのに
あなたが溶けてしまうようで
胸の鼓動が止まらない
明るい秋の陽ざしを浴びて
いま
あなたのまなざしが揺れている

 

❁⃘ 51 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

指を伸ばした先に触れるものが
朝の光だけだったとしても
そこに生まれたちいさなぬくもりを
いとおしいと抱きしめたい
なにげない仕草に
しあわせがひそむように
優しいおはようを
目覚めたばかりのあなたに告げたい

 

❁⃘ 52 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

記憶が打ち寄せる浜辺で
あなたのかけらを拾う
虹色に光る貝殻を
耳にあてると聞こえるのは
あなたの歌声
こんなに懐かしいのに
なんの歌か思いだせない
握りしめた掌のなかで
メロディだけが
いつまでも繰り返される

 

❁⃘ 53 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

夢から覚める夢をみた朝は
遠くにきまって海鳴りが聞こえる
午後には嵐になるだろう
もしも許されるのなら
空から星をひとつ盗んできて
瞳の奥に沈めておきたい
どんな闇におそわれても
光を見失わなくてすむように

 

❁⃘ 54 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

今日の答えが
風に吹かれながら
謎のかたちのまま
立ち去りあぐねている
夕暮れ
左手に残った
あなたのぬくもりが
ゆっくり消えていく
蝉は
とうに死んでしまったのに
脱ぎ捨てられた
抜け殻だけが
いつまでもかなしい

 

❁⃘ 55 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

いろやかたちやおとやにおいに
あなたのすべてを還元し
私の細胞のひとつひとつが
あざやかに記憶している
からだのなかを
あなたの気配が駆けめぐり
いつもまなざしを感じられる
そうしてきっと
いつかひとつになれる

 

❁⃘ 56 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

知らないあいだに
影を盗まれてしまったので
あかるい陽のなかを
歩くことができない
夜になれば
闇ばかり選んで
こっそり出かけられる
それよりも
いっそ影になってしまえば
つめたい月の光を
浴びることもできるのに

 

❁⃘ 57 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

陽だまりをぎゅっとしぼって
手のひらに落ちた蜜柑色のしずくを
ひといきに飲みほしたら
やさしい香りを放つ
あかるい粒々に
なれる気がする
見あげると
あまりにも空がまぶしいから
ぎゅっと
もっとぎゅっとしぼって

 

❁⃘ 58 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

ちいさな嘘をついたら
あなたがかなしい顔をした
おおきな嘘に
みんながそうだとうなずく
嘘に嘘をかさねたら
自分がだれなのかわからない
嘘つきにはなりたくないけれど
きっといつも
嘘が悪いばかりではないけれど

 

❁⃘ 59 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

目をこらさなければ
見えないものもあるように
まぶたを閉じることで
はじめて気づけるものがある
見えているつもりで
ほんとうはなにも見ていなかったと
ひとり立ちどまり
頬にあたる風のあざやかさに
驚いている午後

 

❁⃘ 60 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

声にならないことばを
からだいっぱい詰めこんで
真夜中の底に横たわり
星々を繋いで
新しい星座を作った
あのときのあの場所へ
もういちど
取りに帰ろう
言えなかったことばを
忘れられないことばを
大声で叫ぶために

 

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#詩 #ことば #愛の礫 #あいち2022 #礫

愛の礫ALIVE1

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❁⃘ 01 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

引き潮が置き去りにした泡が弾けるたび
遠浅の夢が少しずつ覚めていく
黙ったまま降りしきる白い雨の朝
遥か遠い銀河からやって来たような気がして
あなたの名前をこっそり呼んでみる
くりかえしくりかえし呼んでみる


❁⃘ 02 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

飲み残したコーヒーのように
「それから」とつぶやいたまま
あなたは席を立とうとする
遠くで静かに海がひかる午後
あなたの指先ばかりを見つめている


❁⃘ 03✩*̩̩̩̥✿*⁎

麦藁帽子のへこみに置き去られているのは
背中に広がる潮の香りの日焼けの跡と
ラズベリーアイスクリームの夕焼け
それから帰り道で拾った貝殻の奥で
いつまでもこだまするさようならの声


❁⃘ 04 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

あなたのひろげた海の底で
うずくまる一粒の真珠になりたい
寄せては返す波の鼓動と
潮の香りを養いとして
透きとおるほどの青に染められ
いつまでも眠る真珠になりたい


❁⃘ 05 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

心のまんなかに土砂降りの今日があって
それなのにいつも傘が見あたらない
水しぶきを避けて雨やどりしながら
遠まわりをしているうちに迷子になる
湯気がたちのぼるほどずぶ濡れてみたい
ときに訳もなくそう思うこともあるが
すべての名を叫べる夜明けはまだ来ない


❁⃘ 06 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

どこかで
硝子の割れる音が聞こえた
私のあげた悲鳴だったかもしれない
指先に赤が膨れあがって
後から痛みが追いついてくる
どうにかして
傷つく前に
痛みを知る方法はないかしら
絆創膏にできた染みが
問いかけてくる


❁⃘ 07 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

あの日
校舎の隅に落ちていた陽だまりに
消えないで
と叫んだことは忘れてしまったのに
咲いていたタンポポの鮮やかな黄が
いきなりよみがえることがある
そのまぶしさの意味はわからないが
あのときの私は
いまもきっとそこにいる


❁⃘ 08 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

いまここにいる
そのことだけが
すべてだった子どもの頃のように
一日の終わり
暮れていく今日のせつなさに
声をあげて泣くことができたなら
どんなにいいだろう
美しい夕焼けが
涙に溶けて
きっと
ひかる永遠になる


❁⃘ 09 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

なにもかも否定したいのは
自分自身を
肯定したいからにほかならない
あらゆるものが美しく
みずみずしいいのちにあふれ
まぶしくて見つめられない
きらやかなすべてに嫉妬する
両腕をひろげ
こんなにも叫んでいるのに


❁⃘ 10 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

後ろ向きに座った電車のように
遠ざかる昨日は見えているのに
明日はいきなりやってくる
だから訳もなく
途中下車をして
止まった風景のなか
深呼吸したいこともある


❁⃘ 11 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

いつかみた夢のことを
聞かせてあげようとしたのに
いつのまにか夢のつづきをみている
それとも
話をする夢をみているのだろうか
夢の途中でふいに目覚めて
夢について話そうとして
どこにもあなたがいないと気がつく


❁⃘ 12 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

ヒエログリフのような
恋がしたいとあなたは言った
五千年ほど眠りつづけたら
ようやく誰かが読み解いてくれる
そんな恋がしたいと言った
夏の終わり
珈琲店の窓辺の席で
遠くに光る海を見つめながら


❁⃘ 13 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

あまりにもたくさんの人がいるので
ひとりになりたくてたまらない
そうは言っても
この星にひとり残されたなら
だれかに会いたくてたまらないだろう
おはよう
を交わす相手がいない朝
あなたの名前をつぶやいてみる


❁⃘ 14 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

欠けているところになりたいと
片目をつぶって腕を伸ばし
三日月をつま弾いていた左手の
綺麗な指先は覚えているけれど
それからあなたはどうしたっけ
帰り道
後ろからついてくるのは
ただまぶしすぎる満月


❁⃘ 15✩*̩̩̩̥✿*⁎

梅雨の晴れ間の飛行機雲に
何度もト音記号を描きながら
まぶしそうに鼻唄を歌っている
それなのに
どんな曲かは教えてくれない
こぼれるような笑顔で
バルコニーから身を乗り出し
青に染まろうとでもするように


❁⃘ 16 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

美しい朝がくるたび
だれかが待っている気がする
それなのに
顔も名前も思い出せない
たしかに待っているはずなのに
わからない
あふれるほどまぶしく
かぐわしい光を浴びながら
かなしい予感を
ただ抱きしめている


❁⃘ 17 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

影ひとつない昼さがり
黄色のパステルで
目も耳も塗りつぶされ
ひまわり畑で迷子になる
風も時間も止まったまま
きっとこうしてあともう千年
真夏の光に貫かれたら
あなたの愛に届くかしら


❁⃘ 18 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

なにも持たずに生まれてきたのに
大切なものが多すぎる
いっそすべてを捨て去ってみれば
むきだしになったいのちこそ
たったひとつのかけがえのないもの
いのちのかたちで生まれてきて
ただいのちとして終わりを迎える


❁⃘ 19 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

おやすみなさいのあと
目を閉じれば
ひとりきりだから
おはようからおやすみまでに
生まれた物語をできるだけ
たくさん抱えて眠りたい
おやすみなさいを言ったひとに
おはようを告げた朝
きのう見た夢を
話してあげたい


❁⃘ 20 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

いつかふたりで並んだまま
星座になることができたら
一晩中あなたといられる
夜空のなかで
いちばん小さな星座になって
ひっそりと光っていよう
それまでは
あなたが手を離しませんように
天の川で溺れませんように


❁⃘ 21 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

雨あがりの晴れた日
水たまりをのぞいてはいけない
深い青に吸い込まれ
戻ってこられなくなる
風もない昼さがり
澄んだ水たまりに
止まない波紋を見たことはないか
そこにいた誰かが
ふっといなくなってしまったあとで


❁⃘ 22 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

影踏みをしていると
だれのものでもない影を
踏んでしまうことがある
目隠しが外れた鬼のように
照れくさそうに
背中を丸めてうずくまり
足の裏をすり抜ける
草叢に消えるとき
さみしげに
ちらりとふりかえりながら


❁⃘ 23 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

あなたを抱きしめていると
なぜ生まれてきたのか
わかったような気がする
すべてのものは
とうに用意されていて
ひとつひとつはじめから
名づけていけばいいのだと
私が私であるために
私とあなたがここにいるために


❁⃘ 24 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

たくさんの樹のなかにいると
光合成ができるような気がする
指先まで伸ばして腕をかかげ
降りそそぐ木洩れ陽にふれる
光だけで生きられたら
どんなにいいだろう
静かに目を閉じたまま
ずっと風の歌を聴いていられる


❁⃘ 25 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

ありふれた一日のなかに
かけがえのない物語がある
たわいないおしゃべりや
ふとしたしぐさ
木洩れ陽のきらめき
吹きわたる風
なんでもないことが
これほどまでに愛おしい
ひとつぶの涙
それから
あなたの手のぬくもり


❁⃘ 26 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

教えてよ
どうかその歌を
あなたが口ずさむ
愛の歌
きっと
はるかな昔から
伝えられたメロディ
胸の鼓動とともに
ちいさくたしかに
いのちに刻まれ
時を越える
るるりららるる
星座を吹きぬけていく
風のような歌を


❁⃘ 27 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

訳もなく涙があふれるのは
すべてがあまりにも美しすぎて
どこにいればいいのか
わからないからかもしれない
たったひとつのいのちだけを
握りしめて生まれたように
もういちどひとりきり
激しい雨に打たれてみたい


❁⃘ 28 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

舞いあがった紙飛行機が
枝にかかったまま
おりからの雨に打たれている
飛ぶことも
降りることもかなわず
ぬれながら
黙ってうつむく
なにか言いかけた口のかたちで
息をひそめ
ただ
時が過ぎるのを待つみたいに


❁⃘ 29 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

おもいきり背伸びしたら
指先が青に染まった夏
はじけ散る光が
あまりにもまぶしくて
思わず眼を閉じたそのすきに
あなたが消えた
降りしきる蝉時雨と
熱い風のなかに
ほんのすこし汗ばんだ
あなたの匂いだけを残して


❁⃘ 30 ✩*̩̩̩̥✿*⁎

そうだったと
気づいたときには
すべてが終わっていて
激しい風のなか
ひとり立ちつくす
だれもいない夕暮れ
燃えあがる空だけが
ひろがって
遠くに海鳴りが聞こえる
かなしみから生まれる
よろこびもあるかもしれない

 

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#詩 #ことば #愛の礫 #あいち2022 #礫

 

#StandWithUkraine ②

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fragments 8

激しい爆撃のニュースのあとは
グルメレポーターの笑い声
午後の陽ざしが
リビングに落ちて
あなたはうたた寝をしている
どうか
あなただけは
永遠にしあわせであれと願う
それがどれほど卑怯か
気づかないふりのまま

   ¸.•.¸¸୨˚̣̣̣͙୧¨*✼*¨୨˚̣̣̣͙୧¸¸.•.¸

fragments 9

明日の激しい砲撃で
そのいのちが砕けることを
瓦礫で遊ぶこどもは知らない
熱い抱擁の後
恋人と絡めたその指が
ためらいがちに弾く引鉄で
こどもの母親が倒れることを
眠りについた兵士は知らない
美しい星空の地球で

   ¸.•.¸¸୨˚̣̣̣͙୧¨*✼*¨୨˚̣̣̣͙୧¸¸.•.¸

fragments10

顔も名前も
声さえ知らない人を殺した
自分の放った砲弾が
いのちを奪ったことにすら
気づいていないかもしれない
知らないあいだの殺人を
だれが罰してくれるだろう
それとも輝かしい勲章を
胸に飾ってくれるだろうか

   ¸.•.¸¸୨˚̣̣̣͙୧¨*✼*¨୨˚̣̣̣͙୧¸¸.•.¸

fragments11

砲弾の破片を無数に抱いたまま
まもなく私は死んでしまう
からだに
これほどたくさんの血が流れていたと
いまさらのように驚く
おかあさん
あなただけは逃げのびてください
寒い寒い寒い
どうしてこんなに暗いのだろう

   ¸.•.¸¸୨˚̣̣̣͙୧¨*✼*¨୨˚̣̣̣͙୧¸¸.•.¸

fragments12

最後の願いを聞いてくれ
どうか体を起こしておくれ
俯せでなく
仰向けで死にたい
故郷の空
色を広さを高さを
この眼に焼きつけておくから
息が止まったら取り出し
コップに浮かべてほしい
濁った水も
綺麗にするから

   ¸.•.¸¸୨˚̣̣̣͙୧¨*✼*¨୨˚̣̣̣͙୧¸¸.•.¸

fragments13

あなたの恋人が
私に銃口を向けた
私の息子が放った砲弾が
あなたの母親の上で炸裂したかもしれない
あなたに繋がるひとびと
私に繋がるひとびと
繋がっているたくさんのひとびとの
どこに境界線を引けばいいのだろう

   ¸.•.¸¸୨˚̣̣̣͙୧¨*✼*¨୨˚̣̣̣͙୧¸¸.•.¸

fragments14

さようならもいえなかった
ありがとうもいえなかった
どんなふうにしんでしまったのか
じぶんでもよくわかっていない
あっというまのことだった
なくこともできなかった
ただ
あなたのことを
いっしゅんおもいうかべた


#詩 #現代詩 #自由詩 #詩人 #詩集 #文芸 #文学 #芸術 #言葉 #創作
#いま詩歌で伝えよう
#あらゆる戦争に反対します
#NoWar
#StandWithUkraine
#нетвойне #Противійни

 

 

#StandWithUkraine

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fragments1

穏やかに目を覚まし
おはようと言いたいだけなのに
優しい朝のひかりのなか
食卓を囲んで
おいしさを分かちあいたいだけなのに
ふと耳にした歌に
こころを奪われたいだけなのに
こんなに美しい空のもと
戦争が始まる

   ¸.•.¸¸୨˚̣̣̣͙୧¨*✼*¨୨˚̣̣̣͙୧¸¸.•.¸

fragments2

銃口を向けた先に
ひとつのいのちがあるが
そこに繋がるあまたのいのちを
思うことができるか
引鉄のこちらにもまた
たくさんのいのちがあることを
銃声から生まれるものには
悲劇のほかに
どんな名前も与えられない

   ¸.•.¸¸୨˚̣̣̣͙୧¨*✼*¨୨˚̣̣̣͙୧¸¸.•.¸

fragments3

食卓で手をあわせ
感謝と労いのことばとともに
いのちを奪うたび
生かされていることを思う
いのちが輝くためには
いのちを養いとするほか
どうすることもできないなら
せめてひとだけは
傷つけあわずにすみますように

   ¸.•.¸¸୨˚̣̣̣͙୧¨*✼*¨୨˚̣̣̣͙୧¸¸.•.¸

fragments4

音楽で耳を閉じ
マスクから目だけを出して
手のひらのガラスで
桜の開花予想や
ミサイルの爆発を見ながら
黙ってうつむいている
無口の人びとと
ウイルスとを乗せて
満員電車は
美しい朝焼けのなかを
ひたすらに走る

   ¸.•.¸¸୨˚̣̣̣͙୧¨*✼*¨୨˚̣̣̣͙୧¸¸.•.¸

fragments5

死んだひとは星になるから
たくさんミサイルが爆発した夜は
きらやかな空になる
死者はいつも数になるけれど
オレクサドル
オレーナ
セルヒーイ
イルーニャ
せめて新しい星々には
そのひとたちの名前で呼んであげよう

   ¸.•.¸¸୨˚̣̣̣͙୧¨*✼*¨୨˚̣̣̣͙୧¸¸.•.¸

fragments6

あんなにうつくしいひかりが
わたくしのいのちをうばいにくる
おおきすぎるおとが
さけびをけし
わたくしは
いっしゅんのうちにじょうはつする
そらがこんなにあおいのに
さようならもいえず
かげすらものこせないまま

   ¸.•.¸¸୨˚̣̣̣͙୧¨*✼*¨୨˚̣̣̣͙୧¸¸.•.¸

fragments7

俺がひきがねを引いた
きっとだれかが死んだ
ちいさな子どもかもしれない
みんな戦争はやめろと言う
俺だって人殺しになりたくない
あまりにも空が青すぎる
砲弾の降りしきるなか
銃を捨て
立ち尽くせばいいだろうか


#詩 #現代詩 #自由詩 #詩人 #詩集 #文芸 #文学 #芸術 #言葉 #創作
#いま詩歌で伝えよう
#あらゆる戦争に反対します
#NoWar
#StandWithUkraine
#нетвойне #Противійни

 

 

こんなに空が美しいのに

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穏やかに目を覚まし
おはようと言いたいだけなのに
優しい朝のひかりのなか
食卓を囲んで
おいしさを分かちあいたいだけなのに
ふと耳にした歌に
こころを奪われたいだけなのに

たとえば風が吹いて
樹のざわめきにまぎれながら
あなたの声がよみがえるとき
できればやわらかな笑顔であってほしい
叫び声や呻き声
苦しみにゆがんだまなざしではなく
あたたかな陽だまりをまとっていてほしい
たとえば遠くに海鳴りが聞こえる午後
たとえばいつまでも眠れない夜
そっとあなたを思いだすときに

ちいさな星のうえを
おはようのあいさつが駆けぬけていく
果てしない宇宙で
ひときわ青く輝きながら
Good morning
안녕
你早
早安
Buenos días
सुप्रभात
صباح الخير
Bom dia
Доброе утро
Доброго ранку

それなのに
こんなに美しい空のもと
戦争が始まる

 

#詩 #現代詩 #自由詩 #詩人 #詩集 #文芸 #文学 #芸術 #言葉 #創作
#いま詩歌で伝えよう
#あらゆる戦争に反対します
#NoWar
#StandWithUkraine
#нетвойне #Противійни

 

🏆 第18回東御市短詩型文学祭 特選 受賞 🏆

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「第18回東御市短詩型文学祭」
「現代詩の部」において、
「特選」をいただきました。

審査にあたられた先生方はじめ、企画・運営に御尽力された皆様方に、衷心より御礼申し上げます。

残念ながら、表彰式は、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、中止となってしまいました。

 


#詩 #現代詩 #自由詩 #詩人 #詩集 #文芸 #文学 #芸術 #言葉 #創作 #東御市

🏆 第32回野田宇太郎生誕祭献詩 一席 受賞 🏆

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このたび、「第32回野田宇太郎生誕祭献詩」で一席をいただきました。
審査にあたられた先生方はじめ、企画・運営に御尽力された皆様方に、衷心より御礼申し上げます。

野田宇太郎文学資料館」のホームページに、一席受賞者コメントと作品が掲載されています。
御一読いただけますと、幸甚です。

http://www.library-ogori.jp/noda/kenji/32/30-3.html

 

#詩 #現代詩 #自由詩 #詩人 #詩集 #文芸 #文学 #芸術 #言葉 #創作 #野田宇太郎生誕祭献詩

 

 

 

🏆 文部科学大臣賞 受賞 🏆

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第36回国民文化祭
紀の国わかやま文化祭2021
いわで「現代詩の祭典」

において、
文部科学大臣賞」をいただきました。

審査にあたられた先生方はじめ、企画・運営に御尽力された皆様方に、衷心より御礼申し上げます。

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#詩 #現代詩 #自由詩 #詩人 #詩集 #文芸 #文学 #芸術 #言葉 #創作

 

神話

f:id:aoyamayuki:20210919101453j:image

あの東の空の果て
そこにある星からのはじめての光は
まだここにはとどかない
だからそこに生まれた新しい世界
そのことについて誰も知らない

けれどもたしかに息衝いて
ちいさないのちの粒々たちが
はじけてもえあつくながれて

地球
というなまえさえなかった頃
そんなふうにうたった詩人が
遙かな西の空にいたかもしれない

夕日にむかって歩いてゆきながら
そう思うことはないか
けれどもまた星空はあらわれ
今夜あたりはもう
秋がしめやかにならびはじめる

 

#詩 #現代詩 #自由詩 #詩人 #詩集 #文芸 #文学 #芸術 #言葉 #創作

戦士の黄昏

f:id:aoyamayuki:20210821193419j:image

ほらそんなふうに
あのひとも歩いていった
あなたもまた
私がすてたきのうの空へ
死んだはずのあの私を
見つけるのだといって
歩いていったきっと
どこかで生きていると
きらりと鋭い風を
左の肩の傷に感じながら
かならず見つけてくるからと
きっとつれて帰るからと
待っていて
約束
この時間のこの場所で
いろをとめてひかりを
おとをそのままにして
きっときっと待っていてと
帰るからかならず
見つけてもどるから本当に
憶えているから
あの燃える朱鷺色の髪を
立ちつくした湖の碧を
遠ざかる雷鳴を
たったこのいまもこんなふうにありありと
あのとき私の瞳に
ながれていた虹の彩りを
こんなにも鮮やかに
こんなにもはっきりと
よみがえらせることができるから
そのまま
じっといろになって
ひかりになっておとに
なったままじっとそのままで
かならず待っていて帰ってくるから
もどるから本当に
かならず見つけてくるからと
それでもいまでは
忘れてしまって
なにを見つけだせばよかったのか
わからなくなったままただ
ひとつの大きな傷痕になって
私の内側を
どこまでも歩きつづけている
あなた

 

#詩 #現代詩 #自由詩 #詩人 #詩集 #文芸 #文学 #芸術 #言葉 #創作

後朝

f:id:aoyamayuki:20210802161834j:image

ちいさな肩のうえに
あなたの胸があつい
溶けてゆく柔らかなひろがり
そして すこうし汗

決してたどりつけない
だから遠さにあこがれてしまう
それならば見えてはいないのだろうか
こんなにもあなたの胸があつくふるえ
そのなかに
こんなにも確かに
あなたの鼓動を感じられるのに

愛の余熱に息苦しい
夢のなかでしか夜は生きつづけられないのか
願いのかたちをして
吐息があなたの耳の奥を吹く
夜の行方はいつもしらじらしい朝
だからいつも夢なんか見ようとする
遠さはたどりつけないから遠いというのに

やがてそのうち
日常のはじまる音がする
たくさんのひとびとが
夜を洗い流そうとまた歯を磨きだす
あなたの出てゆこうとするテーブルから
あまりにも唐突に
昨夜食べのこしたプリンが落ちる
この白い朝

 

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棲息

f:id:aoyamayuki:20210704161017j:image

たしか腕から肩へ
そんな記憶がある
いまではもう背中いっぱいに
どこまでも繁りつづける
数えきれない葉たち
爪はうすみどりに染まり
眼のなかのふくらんだ空に
葉脈がひろがりはじめましたね
だからもう心配はいらない
あなたはそう言ってほほえみ
私の腕をさやとふるわせて
この部屋から出ていってしまった
あの日から
この窓辺のひかり
その柔らかな視線だけが
私のからだのうえを触れる
たしか腕とか肩とか
そんなものがあったような気がする
背中
私の裏側にむきだしのひろさ
あれはいつかの夢だったのだろう
いまではただみどりの粒々だけが
頭のなかで育ち透きとおってゆく
あなた
は誰だったのか
あなたはいつかの私だったのか
そんな記憶もあわいみどりにゆれて
どうでもいいことだ私には
どうでもいいことだ私さえみどりに消えて
あとにはひろがるみどりが
秘めやかに息衝きはじめる

 

#詩 #現代詩 #自由詩 #詩人 #詩集 #文芸 #文学 #芸術 #言葉 #創作

 

 

驟雨

f:id:aoyamayuki:20210615214129j:image

樹たちが騒がしい夜は
熱帯モンスーンの海を夢みる
雨季のどのあたりだろういまごろ

この日本では
梅雨明けについて気象台が語る
私のなかの気候について
あなたは話せるだろうか

雨の降る日を憶えていて
見失ったはずの傘
あるいは新しいレインコート
そんなものを用意してきてくれる
ことなんてあるだろうかあなた

雨季でなく
梅雨でもなく
しのびやかに歩きめぐる
ひとつがいの雨の脚がある

知らないからだの奥で
育ちつづけていた幾つもの粒々たち
気づくよりももっとまえから
私だけの暦を刻みながら

降りはじめた雨が
前髪を濡らしてゆく
あなたを乗せた快速
その遠ざかる気配を背中に
ふと駆けだしてしまう
帰途

 

#詩 #現代詩 #自由詩 #詩人 #詩集 #文芸 #文学 #芸術 #言葉 #創作