詩集『リエゾン LIAISON』より No.23「流れる」
流れる
流れるものは水だろうか時間だろうか
どこかから来てどこかへと向けて
流れているものは
いつもひとではなかったか
岸辺でいつまでも見ているので
河は流れてゆくのだろう
見つめられることに耐えきれず
やがて去るひとをいつくしみながら
朝刊を積みあげてゆくと
二年と八日めに背丈とならぶ
だがそれも時間ではない
ただキロあたり何個の
トイレットペーパーの値に等しい
石斧や土器を
ナイフやコーヒーポットに持ちかえて
それからどんな道具を編みだすのか
どんなときにも空はひろがっていて
風は吹いているにちがいない
いつでも星はゆるやかに遠ざかり
いつでも陽は沈みまた昇って
いつでも大地には草木が生い
いつでもひとは歌をうたうが
百年前ここにいたひとは
百年後には誰もいない
それでもひとは誰かを愛し
誰かのために泣くだろう
真昼のスクランブル交差点
けれどもたしかに私はいまここにいて
あなたが好きだと大声をあげる
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