果てしない青のために(Pour le bleu sans fin)

青山勇樹:詩人。名古屋市在住。大学の教員として教育や研究に励みながら、詩を書いています。もともとは、高等学校の国語科の教員でした。31年間の高校勤務のうち、後半の14年間は教頭として学校の管理にあたりました。現在、大学では、言語と表現、日本語表現、日本の文学などの講義を担当しています。あなたの心に、言の葉を揺らす優しい風が届けられますように。光と戯れる言葉のきらめきが、あなたの心にもあふれますように。仕事の依頼などはメールで ⇨ aoyamayuki1963-poetry@yahoo.co.jp

詩集『リエゾン LIAISON』より No.27「未遂」

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未遂

その街角をまがってまっすぐに行けば
青空につきあたるから
その城壁に沿って歩いてゆけば
かならず青空にゆきつくから
そう教えてくれた朱鷺色の髪の少女も
ウェディング・ドレスの裾を気にしながら
いつだったか
飛行場から翔びたっていった

なにをそんなふうに泣いているのですか
そう訊いたことがある
あなたは哀しくないのですか
そう答えが返ってきたことがある
いったいそれはなんだったのか
今まで私はなにが哀しかったのか
それが憶い出せない
それ以上哀しいことがありますか
そう言ってむせぶ泣き女に出逢ったのは
いつのことだったろう
それにしてもどこまでも石垣がつづいて
まだ空の青さにはたどりつけない

あのときの少女も今頃は
子供の水遊びを眺めて
毎日帰りの遅いひとのことを
気遣っているだろうか
それともアルバムを繰りながら
むかし駆けつづけていた遠い道のりのことを
憶いかえしているだろうか

城壁に沿った道がある
石畳のゆるやかにのぼる道がある
日々を数え忘れてしまっていた胸に
歩きはじめた頃の足音が
ときおりよみがえってくることがある
過ぎていったひとの横顔が
石垣の隙に浮かびあがってくることがある

道がある
どこまでもまっすぐな道がある
歩いてゆきながら
空の青さについて語ろうか
そう思うのはいつものことだ
けれどもそれは思うばかりで
つきささるような青さには
いつまでもたどりつくことができない

 

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