果てしない青のために

あなたの心に、言の葉を揺らす優しい風が届きますように。

神話

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あの東の空の果て
そこにある星からのはじめての光は
まだここにはとどかない
だからそこに生まれた新しい世界
そのことについて誰も知らない

けれどもたしかに息衝いて
ちいさないのちの粒々たちが
はじけてもえあつくながれて

地球
というなまえさえなかった頃
そんなふうにうたった詩人が
遙かな西の空にいたかもしれない

夕日にむかって歩いてゆきながら
そう思うことはないか
けれどもまた星空はあらわれ
今夜あたりはもう
秋がしめやかにならびはじめる

 

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戦士の黄昏

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ほらそんなふうに
あのひとも歩いていった
あなたもまた
私がすてたきのうの空へ
死んだはずのあの私を
見つけるのだといって
歩いていったきっと
どこかで生きていると
きらりと鋭い風を
左の肩の傷に感じながら
かならず見つけてくるからと
きっとつれて帰るからと
待っていて
約束
この時間のこの場所で
いろをとめてひかりを
おとをそのままにして
きっときっと待っていてと
帰るからかならず
見つけてもどるから本当に
憶えているから
あの燃える朱鷺色の髪を
立ちつくした湖の碧を
遠ざかる雷鳴を
たったこのいまもこんなふうにありありと
あのとき私の瞳に
ながれていた虹の彩りを
こんなにも鮮やかに
こんなにもはっきりと
よみがえらせることができるから
そのまま
じっといろになって
ひかりになっておとに
なったままじっとそのままで
かならず待っていて帰ってくるから
もどるから本当に
かならず見つけてくるからと
それでもいまでは
忘れてしまって
なにを見つけだせばよかったのか
わからなくなったままただ
ひとつの大きな傷痕になって
私の内側を
どこまでも歩きつづけている
あなた

 

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後朝

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ちいさな肩のうえに
あなたの胸があつい
溶けてゆく柔らかなひろがり
そして すこうし汗

決してたどりつけない
だから遠さにあこがれてしまう
それならば見えてはいないのだろうか
こんなにもあなたの胸があつくふるえ
そのなかに
こんなにも確かに
あなたの鼓動を感じられるのに

愛の余熱に息苦しい
夢のなかでしか夜は生きつづけられないのか
願いのかたちをして
吐息があなたの耳の奥を吹く
夜の行方はいつもしらじらしい朝
だからいつも夢なんか見ようとする
遠さはたどりつけないから遠いというのに

やがてそのうち
日常のはじまる音がする
たくさんのひとびとが
夜を洗い流そうとまた歯を磨きだす
あなたの出てゆこうとするテーブルから
あまりにも唐突に
昨夜食べのこしたプリンが落ちる
この白い朝

 

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棲息

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たしか腕から肩へ
そんな記憶がある
いまではもう背中いっぱいに
どこまでも繁りつづける
数えきれない葉たち
爪はうすみどりに染まり
眼のなかのふくらんだ空に
葉脈がひろがりはじめましたね
だからもう心配はいらない
あなたはそう言ってほほえみ
私の腕をさやとふるわせて
この部屋から出ていってしまった
あの日から
この窓辺のひかり
その柔らかな視線だけが
私のからだのうえを触れる
たしか腕とか肩とか
そんなものがあったような気がする
背中
私の裏側にむきだしのひろさ
あれはいつかの夢だったのだろう
いまではただみどりの粒々だけが
頭のなかで育ち透きとおってゆく
あなた
は誰だったのか
あなたはいつかの私だったのか
そんな記憶もあわいみどりにゆれて
どうでもいいことだ私には
どうでもいいことだ私さえみどりに消えて
あとにはひろがるみどりが
秘めやかに息衝きはじめる

 

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驟雨

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樹たちが騒がしい夜は
熱帯モンスーンの海を夢みる
雨季のどのあたりだろういまごろ

この日本では
梅雨明けについて気象台が語る
私のなかの気候について
あなたは話せるだろうか

雨の降る日を憶えていて
見失ったはずの傘
あるいは新しいレインコート
そんなものを用意してきてくれる
ことなんてあるだろうかあなた

雨季でなく
梅雨でもなく
しのびやかに歩きめぐる
ひとつがいの雨の脚がある

知らないからだの奥で
育ちつづけていた幾つもの粒々たち
気づくよりももっとまえから
私だけの暦を刻みながら

降りはじめた雨が
前髪を濡らしてゆく
あなたを乗せた快速
その遠ざかる気配を背中に
ふと駆けだしてしまう
帰途

 

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序章

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それは吹きちぎられたものたちの影
それは朝に投げだされた夢
それはうつむいた祈り
それは消える風紋
それは私
けれども私はひとつの遠さである

めざめると
誰もいない
悲しい不在に満ちている
遠浅の私
うすら陽のなか
せつなくあわく
どこまでもひろがり

樹々もなく
街もなく
私のひそかな内側に
ひとつのひろがり
あふれる激しい沈黙のなかに
どこまでもつづいて

どこまでも
こんなにどこまでも
誰もいない
それならば
せめてあなたを愛することにして
愛することで
私を忘れ
私をなくし
私のなかを
いろやざわめき
ぬくもりやひかり
ひとびとのおしゃべりにつくりかえて

つくりかえ
つくりかえることでしかし
確かにめざめて私
この遠さについて
こんなにも鮮やかに

というなまえで語りはじめる

 

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椅子

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行きましょうか
そう言って立ちあがったあなたの
耳のふくらみでゆれていた午後の陽が
まだそのあたりで立ち去りあぐねている
そんな気がしたことのあるその椅子に
あなたが腰かけていたのはいつだったろう
それとも黙ったまま
あなたがその場所にいたということ
そんなことなど本当は
ありはしなかったのかもしれない
たったひとりの夜のまんなかで
こんなことを想いながら
そこに腰かけていた誰かがいてもいいだろう
けれどもいまは確かに
その椅子には誰もいない
駆けぬけていった夏の果てには
つめたい雨の痛さだけが置き去られていて
女手の宛名文字が
濡れて読めなくなってしまっている
手紙はとうに行方不明で
そのひとの捨てていった海のなかを
今日も捜してみたのだけれども
なにもない
だからたったひとつ
いつまでも雨にうたれていてその椅子は
通りすぎていったたくさんの
陽にやけた背中ばかりを想い浮かべている

 

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風の行方

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せめて
きょうの行方くらいはと
寄せてはうずくまる想い出の片隅で
しぶきをあびながらしばらくは
描かれてゆく波紋をみつめていたけれども

誰もそれをとめることができないまま
やがて旋律はフィナーレへと流れ
あなたはいま最後のフレーズを
穏やかに胸にうけとめようとしている

さよならのとき
ひとはこんなにも無口だ
それだけでなく
さよなら
という言葉の言い方さえも
不意にどこかへ置き忘れてきてしまって

歩き去るひとの背中はまぶしい
搾られた時間の果汁が芳しく
ひとしずくの滴りになにもかもがとけて
まぶしさのなかでちいさく悲鳴をあげる
どこまでもそれは青く谺して
あらゆる風があなたへと吹く
それでもどこかで再び風のたつ気配がして
いつまでもここから私を去らせない

誰もいないテニスコート
たった一本のラケットがかなしい
あなたが朝の光にゆらめいてしまうと
港のみえるこの街で
新しい風をうけてまた誰か
しずかに唄を口ずさみはじめる

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破鏡

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昇ったばかりの下弦の月を盗んで
スーツケースに閉じ込めたら
砂浜につづく坂道を急いで降りる
海へと渡る風にせきたてられながら
ひりりとするかすかな傷を額に刻みながら

潮の満ち干が月のかなしみのせいならば
水底に深く沈めてやればいい
光も音もいらなくなった水圧だけの世界で
四十五億年前の凍えた夢を抱きしめたまま
すでに昨日までの月がひっそり揺れている

二十三個目の月を沈めたあとで
潮風にしみる私の額の奥に
もうひとつ古い傷があったことに驚く
綻びかけた縫い目の奥に果てない空洞がひろがり
ただ漆黒の炎だけがうずうずと燃えている

覚えていなければきっとかなしみも生まれない
失ったことに気づいて初めて
切ない願いがあふれるのだろう
もしも思い出すことがないとしたら
忘れていることすらわからないように

月はいつも生まれた地球に帰りたがるけれど
顔を隠したまま廻ることしかできない
振り仰いだ銀河の横で星座が配列を変え
宇宙の果てで終わりが始まりと結ばれると
あしたの月がゆっくり目覚める気配がする


  初出誌:『詩と思想』2019,3(384),p.100.


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詩集『リエゾン LIAISON』より No.29「レコード」

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レコード

溝のなかで
あなたはまだ生きていて
あの頃よく歌ってくれたジャズのナンバーを
ちょっとだけよそ行きに歌っている

黒く磨かれたピアノの天板に
いつもあなたの横顔がゆれていて
そうしているのが癖だった
指先でくゆらせている煙草
その銘柄もしっかり覚えている

どこから と どこまで
その答えを見つけられないのが
円なのだと知っていたけれど
刻まれた溝はいつまでも
限りなく近い螺旋のまま
ふたつの端を握っている

けれどもそれはもう三十年も前のこと
歌声のあなたと同い年の私の息子が
いまではすっかりあなたに入れあげていて
あなたにあわせて口ずさみながら
擦りきれたジャケットに
丁寧にセロハンテープを貼りつけている

 

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詩集『リエゾン LIAISON』より No.28「埠頭」

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埠頭

風は渡っていった
それきり

もうこれ以上ここで
旋律になって歌いつづけられないから
預けてあった靴と楽譜を
かえしてください
そういってあなたはでていった
真夜中の扉をあけ
匂い立つ朝霧の彼方へ
さよなら
そのとき叫んだあなたのみずいろが
ぼくのなかでひかる海になる

たったひとつのくちづけだけが
すべてをものがたることだってあるのだ
あなたのいなくなった窓辺のノートに
そう書いたいくつかの文字ですら
あなたのひろげていった海のなかでは
ひとむれのうたかたよりも
いまではもっとあわくて

こんなふうに見つめている
あの遠い朝焼けにしても
そこにたどりついたときにはもう
きっとどこかの夕陽にちがいない
それなのに
あなたはいってしまった
確かにそこに朝があるからと
そこにいって朝になるからと
そのあとに
こんなに眩しい
数えきれないさざ波をうち寄せて

確かなものなどどこにもない
そのことだけがあまりにも確かだ
ここにあるこのあふれる朝のほかに
いったいどこに朝があるというのだろう
そしてここにあるこの夜と
この愛といのちと歌とのほかに

けれどもいってしまった
立ちつくすぼくをかすめあっけなく鮮やかに
風は渡っていってしまった
それきり

 

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詩集『リエゾン LIAISON』より No.27「未遂」

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未遂

その街角をまがってまっすぐに行けば
青空につきあたるから
その城壁に沿って歩いてゆけば
かならず青空にゆきつくから
そう教えてくれた朱鷺色の髪の少女も
ウェディング・ドレスの裾を気にしながら
いつだったか
飛行場から翔びたっていった

なにをそんなふうに泣いているのですか
そう訊いたことがある
あなたは哀しくないのですか
そう答えが返ってきたことがある
いったいそれはなんだったのか
今まで私はなにが哀しかったのか
それが憶い出せない
それ以上哀しいことがありますか
そう言ってむせぶ泣き女に出逢ったのは
いつのことだったろう
それにしてもどこまでも石垣がつづいて
まだ空の青さにはたどりつけない

あのときの少女も今頃は
子供の水遊びを眺めて
毎日帰りの遅いひとのことを
気遣っているだろうか
それともアルバムを繰りながら
むかし駆けつづけていた遠い道のりのことを
憶いかえしているだろうか

城壁に沿った道がある
石畳のゆるやかにのぼる道がある
日々を数え忘れてしまっていた胸に
歩きはじめた頃の足音が
ときおりよみがえってくることがある
過ぎていったひとの横顔が
石垣の隙に浮かびあがってくることがある

道がある
どこまでもまっすぐな道がある
歩いてゆきながら
空の青さについて語ろうか
そう思うのはいつものことだ
けれどもそれは思うばかりで
つきささるような青さには
いつまでもたどりつくことができない

 

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詩集『リエゾン LIAISON』より No.26「薄明」

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薄明

からんと晴れたぼくの胸のひろがりに
そびえるひとつの梢がある
その先にはいつからか
ちいさくあおざめた矢印があって

風が

きまって吹いているので
方角はいつも行方知れずだ
どこかで翼のはばたく気配がして
ふりむけば
黒く装ったあなたが
横顔をみせて歩いてゆこうとする

ひとつのおおきな想いが
真夜中の空を渡っていったのは
たしか夏の終わりのことだったろう
あれからずいぶんときがたって
ひとがうたをくりかえしうたって
鳥たちが遠くへいってしまって
たくさんの星が流れて
それでも顔をあげてみると
日焼けした肌をあちこちに貼りつけたまま
まだ空は
新しい陽を見つけることができない

朝でもなくまして夜でもなく
ひろがりは
ただこうして晴れわたるばかりで
どこで生まれてどこへ去るのだろう
風だけがいつも
あなたの髪の香りのふりをしている
矢印といえば
いつもその行方を追いかけて
からからとかわいた夢をみているばかりだ

風が

ではなくぼくの腕がすらりと伸びて
その髪をすくおうとするけれども

つきぬけた腕の果てには
いつまでも立ちつくすひろがりが
やがて訪れる次の風を待ちわびて
黙ったまま矢印を見つめつづける

 

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詩集『リエゾン LIAISON』より No.25「扉をあけてでてゆけば突然の真昼」

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扉をあけてでてゆけば突然の真昼

とりあえず〈とりあえず〉と書いてみて
そこからはじまる物語もあるにちがいない
けれどもこうして待ちつづけてはいても
あいかわらず空はまぶしい青で
そのうえ気温は三十度を越えようとしている
夏のはじまり
ひろがりはひろがりのまま
色彩は色彩のまま
音さえも音のまま時間のなかにありつづける
だからすべてに〈とりあえず〉と封印して
扉をあけてでてゆくのだとりあえず

突然の真昼

記憶なんていらない
いま生きているこの腕そしてこの瞳
ただそれだけでいま生きているこの唇
この動悸このほほえみこの涙この傷痕
ただそれだけでこの真昼のなかに
ひろがりはひとつの点にあつまり
色彩は須臾の閃光
音は激しい静寂として
この真昼にあればいい

いのちはいつもただひとつきり
生きること以外なにもできない
愛すること歌うこと想うことや眠ること
それ以外にはなにもできない
ひとつきりたったひとつきり
ただあなたのぬくもりを感じているばかり
高層ビルの偏光ガラス
ショーウインドの麻のジャケット
並木道のゆるやかな坂
銀色にひかるプラネタリウム
すべてが立ちつくすこの真昼のなかを
ひとつきりたったひとつきりのいのち

とりあえず

 

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詩集『リエゾン LIAISON』より No.24「虹」

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殺人現場の隣で
バッハのパッサカリアを聞きながら
そのひとと午後のお茶を飲んでいた
とはじまるひとつの物語を
燃やしてしまったのよ書きあげてから
あなたのそんなおしゃべりを聞きながら
こうして紅茶を飲んでいる
いま流れているのは誰のソナタだろう
暖炉にくべられた薪が
ちょうどあなたの瞳の闇で
黙ったまま死にたえてゆくところ

沈黙の値段を知っているかい
この店のオレンジ・マーマレードと同じ
それともあなたの背丈の白銀の硬貨
それより物語の話だったね
突然あなたは黙ってしまって
だからぼくはマーマレードが食べたい

そんなのは嘘だ
マーマレードのことではなくて
あなたが物語を燃やしてしまったこと
ノートの表紙の黄色が
切り裂くように叫んだからといって
だって物語はここまでで
はじまってからもう二十四行

歳の話などではなく
二十四はあなたの脱いだ服の数
最後は確か緑色だったろうか
ついさっきは一枚のシーツに
あなたの髪が緑にゆれていて
あとでお茶を飲みにゆこうか
そう言ったのを覚えているかい

どんなに焦がれてもたどりつけない
どんなに叫んでもとどかない
どんなにしっかり抱きつづけても
どんなにどんなに
どんなに激しく憧れていても
いつまでも遠い地平線の青に
そこにはあなたがいるのだけれども
どんなに愛しても
どんなに

愛は藍
そんな題がふさわしい

だから物語をかしてごらん
紫草の押花をして
ぼくが持って帰ることにするから
犯行現場は通り雨がよぎって
洗い流してしまったから
お茶を飲み終えたならば
バッハでも口ずさんで歩いてゆけばいい
他人のふりをして行ってしまえば
ほらもうすっかり
雨はあがって虹が立っている


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