詩集『リエゾン LIAISON』より No.06 「朝のエチュード」
朝のエチュード
すべてはどうしてこれほどまでに
私を不安にさせるのだろう
たとえばそれがライターにしても
たとえばひとくちの水であるにしても
こんなにもすべてがそろっているのに
こんなにもたくさんのひとがいるのに
なんだかとても寒くてならない
陽はこんなにもまぶしいというのに
おだやかな朝ふと気がつくと
すべてがふいに透明になる
そんな激しいひろがりのなか
私ひとりが鮮やかにめざめる
いまこうしてここにいる
そのことだけはとてもたしかだ
すべてはたぶん私のために
投げだされている問いかもしれない
それならばひとつひとつはじめから
名づけていってみようかしら
だれかのぬくもりを感じていたいように
すべてのものを抱きしめるために