詩集『リエゾン LIAISON』より No.03 「不在証明」
不在証明
そこにいる
ただそれだけの理由であなたを愛せる
これは不遜な考えだろうか
たとえば〈たとえば〉という言葉ひとつで
あなたについて語ろうとするのは
名づけることで
それは私のなかで息衝きはじめる
不在証明とは
だから名前を消し去ることだ
名づけられないものたちは
ついに私のなかに住むことはできない
瞳 唇 肩 腕 胸
あなたのすべてについて
いったいどうして名づけることができよう
こんなにもあなたはしなやかで
こんなにもあなたはまぶしいというのに
私のなかにあなたはいない
まだ名づけられない
あなたの破片がころがるばかりだ
だから〈だから〉という言葉ひとつで
あなたについて語れないだろうか
いま
私の腕のなかで
あなたのからだが叫びをあげる
おお とも うう とも
それは私に名づけられない言葉で