詩集『リエゾン LIAISON』より No.04 「留守番電話」
留守番電話
ひとは沈黙がおそろしいので
おしゃべりをやめることができない
ひとは無がおそろしいので
遍在したいと願うのだ
無を語るには沈黙しかないのに
電話にさえ私はいないと云う声がいる
私はいないというそのことを
あたかも在るというかのように
在ることはつねにかなしみである
在ることについては語らねばならない
それがたとえばこんなふうに
とるにたらない詩であるとしても
言葉はいつもうごきだす
沈黙へそれとも沈黙から
受話器を置くと光がまぶしくて
私は青空について語りはじめる