果てしない青のために

あなたの心に、言の葉を揺らす優しい風が届きますように。

詩集『リエゾン LIAISON』より No.04 「留守番電話」

f:id:aoyamayuki:20191212152203j:image

留守番電話

 

ひとは沈黙がおそろしいので
おしゃべりをやめることができない
ひとは無がおそろしいので
遍在したいと願うのだ


無を語るには沈黙しかないのに
電話にさえ私はいないと云う声がいる
私はいないというそのことを
あたかも在るというかのように


在ることはつねにかなしみである
在ることについては語らねばならない
それがたとえばこんなふうに
とるにたらない詩であるとしても

 

言葉はいつもうごきだす
沈黙へそれとも沈黙から
受話器を置くと光がまぶしくて
私は青空について語りはじめる