🎄 Christmas Eve Special 🎄
📖 華やかな逡巡 📖
驚いたような時雨が一瞬にして駆け抜けたあと
なだらかに伸びる坂道を夕陽のなかへ降りていく
金色に染められた雫が枝先からこぼれ落ちてくる
たくさんのさようならが逆光を受けて眩しい影となる
行き着く場所があるからこそ急ぎ足にもなるのだろう
やがて行方不明になるのであれば足跡ばかり気になる
人知れずゆっくり迷子になっていこうとしても
一日の終わりがあまりにきらやかでとまどってしまう
たくさんの音楽やおしゃべりで飾りたててさえいれば
にぎやかな明日がやってくるとでもいうように
繋がっているというのはただの錯覚なのかもしれない
こんなにもたくさんの誰かがいつも見ていても
ほんとうのところには気づかないのではないかしら
ときとして光や音の過剰が息苦しいならいっそ
黙ったまますべてのなかに浸透できればいいのに
音もたてずに降りしきり積もっていく雪のように
あらゆるものを等しく覆ってひそやかに染みわたり
遍在したいと願うのはあまりにも不遜だろうか
時間も距離も要らなくなっていのちさえゆらめく
そんなあこがれにも似た夢について話してみようか
我にかえると坂道の途中で水たまりを踏んでいる
表通りからはクリスマス・キャロルが聞こえてくる
真夜中を過ぎたらこの冬はじめての雪になるといい
ふいにやわらかな胸のぬくもりがよみがえるけれど
あなたにどんなプレゼントがいいか考えあぐねている